少し前にサイトの資料として「日本怪奇名所案内」という、全国の心霊スポットを紹介する本を購入しました。
1976年出版の本ですが、せっかく購入したので幾つかスポットを紹介してみたいと思います。
濃霧の尾瀬ヶ原に出る幽鬼(福島・群馬・新潟)
尾瀬の怪談です。
霧の尾瀬を進んでいると、強い光が集まってきてその中に女の顔が浮かび上がってきたそうです。
そして自分についてくるように求めるのだとか。
作者にこの話を提供した人は強い意志を持って拒否したものの、もしもついて行っていたら…どこへ連れて行かれたのでしょうね。
水子の霊を秘める杉のほこら(愛知県)
愛知県新城市の鳳来寺にまつわる怪談です。
投稿者(男性)の息子夫婦は待望の子を授かり、いよいよ出産予定日…という段階でした。
しかし嫁は身重のままくも膜下出血で急逝してしまいました。
子も助からず大きなお腹のまま火葬されたそうです。
それから息子(亡くなった女性の夫)は夢で妻と会うようになったそうです。
フクロウの鳴き声のような音と共に亡くなった妻が現れるという夢が何度も繰り返されるのです。
途中で妻が死んでしまったことを思い出し、どこから来たのか尋ねると高い山の杉の木の祠、そしてホーライジという寺の名前を答えます。
今のようにネットの発達している時代ではないので、ホーライジの正体も判らぬまま過ごしていました。
そんなある時、妹家族と共にドライブを楽しんでいる途中で愛知県の鳳来寺にたどり着いたそうです。
そこには確かに古い杉の木の林が並んでいました。
この話を聞いた前述の父親も実際にそのお寺を訪ねました。
そして周辺がフクロウの仲間のコノハズクの生息地である事、杉の木の洞穴の中には水子の霊のためにという木札がかかった場所があることなどを見つけたそうです。
亡くなった女性は死後にこの寺に舞い降りたのでしょうか。
本文を読む限りでは夫婦や一族に縁故のある寺ではなさそうですが…。
この話を読んで思い出したのが、岡山県の備中地方の山間部に伝わる「死者の帝釈天参り」という考え方です。
人は死ぬと近くの帝釈天へ参るという伝承で、閻魔様の前を通る際の札を貰うのが目的とされています。
その時に参るのは広島の庄原市にある帝釈天長明寺です。
この習慣でも長明寺の檀家であるかどうかは加味されません。長明寺も鳳来寺も死者の霊をひきつけ、そして癒やす神聖な力があるのかもしれませんね。
死者の霊を呼ぶ恐山の不思議(青森県)
霊場として知られる恐山の怪談です。
元々は恐山のイタコについて信用していなかったという著者の考えを改めさせたという、銀座のナイトクラブの女性の体験談です。
…余談ですが、著者は奄美大島の怪談の時にもキャバレーに出没しています。そういうお店がお好きなのでしょうね。
閑話休題。
その女性も半信半疑でイタコに亡き母を下ろしてもらいました。
するとイタコの口から母の声で、娘に遺した着物やアクセサリー類の場所を伝えたそうです。
そして家に戻って探してみると本当に出てきたのだとか。
著者も書いていますが、お父さん的、お母さん的な事を喋ることは多少のトレーニングで可能でしょう。
しかし物とその置き場を言い当てるのは、確かにイタコの能力を信じたくなります。
尚、このコンテンツでは同じく怪談の作家として著名な中岡俊哉さんの体験談も書かれています。興味がある人は実際に本を購入してみてくださいね。
…と、長くなってきたので今回はここまで。
有名なスポットが多いのでありきたりな内容になるかと思いましたが、なかなか興味深い話が続きました。
余談ですが、今ネットで検索してもこの本で触れあるように鳳来寺が水子供養で有名という記載は出てきません。
もちろんお寺なので水子供養はされているでしょうが、特にその御利益が知られている風でもないようでした。
この本の他のスポットについてはタグの「日本怪奇名所案内」をご確認下さい。