岡山県の公式サイトで「県政への提言」というコンテンツがあります。
これは県民から寄せられた県政への要望などの意見の内、幾つかを回答付きで掲載しているものです。
今回は令和5年3月分を読んでみましょう。
新アリーナ建設について
〇岡山市が提案するスポーツ施設の建設だが、すでに岡山県には立派なスタジアム(岡山県総合グラウンド)がある。わざわざ税金で新たに北長瀬付近に建設する意味が理解できない。
市民のための老人ホームや災害時避難所(もしくは感染症の療養施設)建設ならば理解できるが。岡山県は費用負担すべきではないと思う。⇒提言いただいた新アリーナ構想の件についてですが、県としては、まずは担当者間で岡山市から構想の中身について十分確認を行った上で、今後の対応について検討してまいりたいと存じます。
ニュースでもよく取り上げられている話題なのでご存じの方も多いと思いますが、念のために補足説明をしておきます。
この新アリーナ建設の構想は岡山県ではなく岡山市が進めている事業です。
5000人規模の新たなアリーナを作り、地元のプロスポーツチームが試合や練習で使う会場として活用する計画を立てました。建設場所は岡山市北区北長瀬が候補です。
ここまでなら岡山市の問題であり、県の問題を扱う「県政への提言」で取り上げられる話題ではありません。
岡山市は新アリーナの経済波及効果を「20年間で岡山県全体で約771億円」と試算、更にその内の57%は岡山市外としています。つまり県全体にとってメリットのある計画なので、岡山県も財政的に協力してほしいというスタンスを取っています。
これに対して岡山県は経済効果の計算の精度が高くないと判断、現時点での協力については消極的な姿勢を示しています。
では県は何が「精度が高くない」としているのでしょう。
これは岡山市が人の動きについて観光のデータを参考にしている事が影響しているようです。
岡山市が提示しているデータの詳細が無いので推測になりますが、集客力のある施設を作ることで、岡山県内の他の場所にも人が移動して経済効果が生まれる…という流れで経済波及効果が計算されているのではないでしょうか。
これに対して県の考えは「スポーツと観光では消費も含めた行動が違う」です。これは確かにあると思います。我々のようなWebサイトでは来訪者を属性で考えるのですが、スポーツ属性の人が観戦目的で北長瀬を訪れたついでに、足を伸ばして県内の他の観光地に行くというのが、どこまで説得力があるのかどうかです。
スポーツ観戦も観光も好きな人もいるでしょうが、観光にはさほど興味がない層だと岡山駅のサンステでお土産がせいぜい、足を伸ばして後楽園…というような動きになるのではないでしょうか。この動きだと新アリーナの経済効果は岡山市に留まります。
スポーツ観戦に来た人の属性を観光客と考えるかスポーツ愛好家と考えるのかで、市外への波及効果が約6割という数字の精度へ対する評価は変わってきます。
県がわざわざ県政への提言のコンテンツでこの話題を扱うのが、現時点での県の新アリーナへの姿勢を示しているようにも思えます。
3月では他に交通マナーについての提言もありますが、長くなったので今回はここまで。興味がある方は県政への提言を開いてみて下さい。
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