かつて岡山県の定番心霊スポットに水島百棟という場所がありました。
三菱化学(当時)の社宅が立ち並ぶ一角で、無人の棟の窓に人の姿が見える、屋上から誰かが見下ろしてくるなどの噂がありました。
私有地なので警備員に追われる事があり、それさえも何か不都合があるから人を排除しようとしているというような、やや無茶な理論で心霊スポット化していきました。
詳しくは後述しますが、そうした建物はすべて失われています。しかし当時の住宅地図を入手できたので、在りし日の水島百棟の様子をご覧ください。
じゃーん。
これが当時の水島百棟…というより、三菱化学の社宅のエリアです。尚、名称は更に前身の三菱化成になっています。
歴史としては三菱化成→三菱化学→三菱ケミカルです。
この場所は現在も同社の社宅が立ち並んでいます。
凸の形になっている建物は、かつて日本で流行したスターハウスと呼ばれたものです。
名称としてはスターハウスと呼ばれますが、形状としてはYの字に例えられることが多いです。
凸の先端部がそれぞれ三つの部屋になっており、いわゆる一般的な板状の集合住宅に対して、各部屋に窓が多く設置出来て日当たりが良い、見た目にも景観が単調にならないなどのメリットがありました。
ただ建造費が嵩むなどのデメリットもあり、1970年代半ば頃から新規で建てられる事は無くなり、その多くが平成の内に失われました。
心霊スポットとしても話題をさらいましたが、こういう古いタイプの建物が残る事でも人気がありました。
やや画像が甘いので見づらいかもしれませんが、幾つかの建物に「閉鎖」という言葉が添えられています。
これが水島百棟の正体です。ちょうど社宅の建物の更新時期になっており、古い建物から順に人を入れないようにして建て替えの準備が進んでいたのです。
上述のスターハウスなども全て撤去されており、現在は新しい建物に変わっています。…という内部の事情を知らない若者たちが、無人の建物が幾つもある事に「何かあるのではないか」と考えるようになり、それが水島百棟の心霊話しを生み出したと考えられています。
そしてこちら。
閉鎖№100。
これは社宅に振られた番号で、閉鎖されていた№100の建物です。
どうやら水島百棟という呼び名は、この閉鎖№100の建物に由来するようです。これが全ての始まりの建物だったのでしょう。
建て替えが始まり噂になっていた建物が無くなり、今ではこの地を心霊スポットと呼ぶ人はいません。しかしまた何十年か後に建物の更新時期が訪れた時に、再び水島百棟の噂が持ち上がる日が来るかもしれません。
ちなみに№100の建物の跡地は新たな建物が建てられれる事は無く、更地になっています。当時と比べると社宅の利用者が減っているのでしょう。建物の全体数もこの地図の時代と比べると随分と減っています。次に噂になる時は水島五十棟マンションくらいでちょうどいいかも?