少し前にサイトの資料として「日本怪奇名所案内」という、全国の心霊スポットを紹介する本を購入しました。
1976年出版の本ですが、せっかく購入したので幾つかスポットを紹介してみたいと思います。
今回は公共施設を舞台にした怪談の続きです。
下田の寺に唐人お吉の幽霊(静岡県)
静岡県の宝福寺にまつわる怪談です。
宝福寺は坂本龍馬と唐人お吉に縁のある地です。
龍馬がここで脱藩の罪を許され、そして唐人お吉はここに墓地が有り、記念館も設置されています。
唐人お吉について簡単に解説します。
美人で評判の芸子でしたが、恋人との仲を裂かれアメリカ総領事 タウンゼント・ハリスのもとへ待妾として奉公に出ることになります。
後に恋人と結ばれるも関係はうまくいかず離婚。
ハリスの待妾を務めた過去から唐人と呼ばれ差別的な扱いを受け、最後は身を持ち崩し貧しい生活の末に入水自殺しました。
ただしエピソードには同名の小説を書いた十一谷義三郎によるフィクションも少なからず含まれており、より悲劇的に伝わっている部分もあるようです。
閑話休題。
この墓では水の音がするなどの怪奇現象が知られていたそうです。
筆者は寺にある墓で木原ゆきという巫女に憑霊実験を試みました。
そしてお吉から以下のことが語られました。
・異人の待妾だった事から受けた迫害、投石などへの苦しみ
・唐人お吉と呼ばれるのは嫌だ
自らがお吉であることの証明に、いつも腰掛けていたという井戸のそばの石の話をし、それは実際に発見されたのだとか。
この時に立ち会った住職はお吉に唐人という呼称を付けないことを約束し、合唱したそうです。
この時に巫女に憑霊したお吉は嬉しそうに頷いたそうです。
…あれ?
お菊人形が口を開いた(北海道)
以前に実写!日本恐怖100名所で紹介した北海道の萬念寺(万念寺)のお菊人形に冠する怪談です。(関連リンク:北海道、万念寺の怪談)
髪が伸びるお菊人形は有名ですし、前回も解説しているので詳細は割愛します。
そのお菊人形の口が開いたというのです。
ネット検索でお菊人形の写真を探してみて欲しいのですが、現在伝わっているお菊人形は僅かに口を開いています。
これは私も初めてテレビで見た時から気になっていた点です。
市松人形に口を開いている物が多いのかどうかは分かりませんが、お菊人形の口の開き方は表情を作るというよりもボーッと口を開いているように見えて不気味だなと。
元々は一文字に締めていたのが、徐々に開いて現在のようになったというのです。気付いたのはお菊人形に着替えや口紅をさしてあげていた住職夫人です。
それがこの本の出る数年前。なので1970年代前半の頃、お菊人形が最初に話題になり始めた初期の写真があれば、もしかするとお菊人形の表情が違っているかもしれません。
午前二時十五分に現れる幽霊(東京都)
東京都世田谷区北鳥島にある雲龍寺の怪談です。
…と思って調べたのですが、北鳥島に雲龍寺という寺院はありません。
同じ世田谷区に龍雲寺という寺院があるので、もしかするとカモフラージュかもしれません。
この寺では1975年2月ころ?(※本の中に去年の2月中旬という記述があるため)から、中年の女の幽霊が出るようになったそうです。
長い畳敷きの廊下を歩いてきて、必ずトイレに入ります。
そして小用を済ませると、出ていくのだとか。
それが必ず夜中の二時十五分。生前はカントのような性格の人だったのかもしれませんね。
国鉄・大船工場の「泣きの塔」(神奈川県)
神奈川県鎌倉市梶原にある国鉄(現・JR)の大船工場の怪談です。
尚、工場は2006年までで稼働を終えています。
この敷地に泣塔と呼ばれる石造宝篋印塔があります。(※現在は鎌倉市の管理です)
ストリートビューでは立ち入れませんが、木の茂っている奥のあたりにあるようです。
旧重要美術品等ノ保存ニ関スル法律で重要美術品に認定、鎌倉市の有形文化財にも指定されています。
夜な夜なすすり泣くような声がするという事から付いた名称です。
オカルト的な由来から、櫓で風が反響するためという現実的な説もあります。
著者はまたしても霊能力者を連れ立ち、鳴き声の霊を招霊してもらう試みをしています。
そしてその霊能者は傷ついた武将たちがうろつく様子、そして血まみれの人などの「修羅場」が見えたというのです。
実はこの地は合戦後にあるそうです。夜な夜な泣いているのは彼らの霊なのかもしれませんね。
これで公共施設の怪は終了です。
記事中にも書きましたが、個人的にはお菊人形の気になっていた口元のことが出てきてビックリしました。
次回からは「お化け屋敷」の怪談を紹介していきます。
この本の他のスポットについてはタグの「日本怪奇名所案内」をご確認下さい。