これまで9回にわたって、「国民宿舎の今」と題し、1982年の観光便覧に掲載されていた国民宿舎を追ってきました。
今回で、シリーズは一区切りとします。
実は、あの一覧には国民宿舎だけでなく、国民休暇村も含まれていました。
最後にその存在を取り上げ、シリーズを締めたいと思います。
岡山県の国民休暇村は、真庭市の蒜山高原国民休暇村です。
国民休暇村と国民宿舎の違い
同じリストに並んで掲載されていたことからも分かるように、国民休暇村と国民宿舎はよく似た成り立ちを持っています。
いずれも、国立公園などの風光明媚な場所に、手頃な価格で利用できる宿泊施設を整備するという目的で作られたものです。
ただし両者には明確な違いがあります。
国民休暇村は、宿泊施設に加え、スキー場やキャンプ場など屋外レクリエーション施設を併設する「滞在型リゾート」志向。
一方、国民宿舎はより簡素で、普通のホテルに近い機能重視型でした。
安価でありながら、
・「余暇を丸ごと過ごす」国民休暇村
・「泊まるための施設」である国民宿舎
という住み分けが、当時ははっきりしていたのです。
なお、国民休暇村は現在、一般財団法人休暇村協会が運営しています。
岡山県ではこの他に、山陽新聞社会事業団が運営していた「金村休暇村」「山陽休暇村」も存在しました。
ひるぜん高原荘の今
蒜山高原国民休暇村は、1963年に「ひるぜん高原荘」として開業しました。現在は休暇村蒜山高原と名称を変え、営業を続けています。
名称から「国民」の文字は外れていますが、運営主体は現在も休暇村協会です。
観光便覧に掲載されていた当時、この施設にはスキー場が併設されていました。
しかし2016年、スキー場は閉鎖されます。
理由は老朽化とされていますが、近年の雪不足を考えれば、地球温暖化の影響を無視することはできないでしょう。
事実、代替として整備された「ひるぜんキッズスノーパーク」も、雪不足により営業できない日が少なくありません。
現在の休暇村蒜山高原には、グラウンドゴルフ場、テニスコート、芝生広場、レンタサイクル、キャンプ場、屋内にはカラオケや図書コーナーなどが整備されています。
スキー場という象徴的な施設を失ったのは痛手ですが、それでもリゾート施設としての形を保ち続けている、というのが正直な印象です。
1982年の観光便覧を手がかりに、当時の日本人、そして岡山県民の観光のあり方を、現在の姿と照らし合わせてきました。
現役で使われ続けている施設もあれば、跡形もなく姿を消し、別の用途に生まれ変わった場所もあります。
今も残る施設には、ぜひ一度足を運んでほしい。そして、失われた施設についても、「かつてそこにあった」という事実だけは、時々思い出してもらえればと思います。
これで、「国民宿舎の今」シリーズは終了です。
