歴史の旅 吉備
秋田書店から1971年に発行されたやや古い本です。
まずタイトルは”歴史の旅 吉備“となっていますが、この本は基本的に吉備路の本です。
ただし倉敷市の美観地区周辺や、岡山城周辺といった地域も含まれています。
吉備路は岡山市の西部~総社市にかけての一帯を指す事が一般的かと思いますが、それ以外の地域も含めたのでタイトルを広域に吉備と表現したのかもしれません。
本の特徴としては文化面を多く取り扱っている事でしょうか。
吉備、吉備路を扱うと造山古墳などの古墳についてや、そこに埋葬されているであろう人物、そして当時の吉備国の強大さなどについての考察…といったものが多く含まれがちです。
その点ではこの本は余りそこへ傾倒しすぎずに、読み易い読み物に落とし込んでいると思いました。
著者について
著者の神野 力(かんの つとむ)さんは岡山文庫など、吉備路周辺の郷土史に関する著書を何冊か書かれている方です。
略歴でいうと、1918年生まれで総社高校の教員を経て、岡山県教育委員会に移っています。
元々詳しくてなのか、それとも転属されてから勉強されたのかは判りませんが、後に文化課に配属されています。
私は著作だと”おかやまの古寺巡礼“と”岡山の祭と踊“を読んだことがあります。
特に前者のおかやまの古寺巡礼は他の本では扱われないような寺院の解説もされているのでお勧めです。
感想
吉備路の基礎知識を得るなら、この本は結構お勧めです。
過度の深掘りもしておらず、広く…浅い事はありませんが、上手くまんべんなく解説しています。
著者の経歴は読んだ後で知りましたが、たまたま読んでいる時に高校生の頃の歴史の授業を思い出しました。
そこそこ掘って、でも過度にはいきすぎない。
読み物として楽しむなら、これはなかなか丁度いいバランスです。
後は興味がある史跡、話題を見つけたらより深く掘り下げている本を探していくのがいいでしょう。
観光に来る際にこういう活字の本を読むという方は少ないかもしれませんが、吉備路旅行の予定があるならこの一冊に目を通しておけば、より楽しめると感じました。