数年前に「限界ニュータウン」という言葉が流行った事があります。
1970年頃から開発が進んでいたニュータウンが高齢化、人口が減少してしまった為にさながら限界集落のような様相を呈するようになった状況を指す言葉です。
岡山県では赤磐市の山陽団地などがその言葉を冠して呼ばれる事があります。
しかし赤磐市にはもっと深刻な限界ニュータウンが存在します。
それがグリーンタウン殿谷です。
山…?と思うかもしれませんが、これは山陽団地の成功を受けて、当時の赤磐郡熊山町との殿谷に整備されたニュータウンです。
余り情報が多くないので、ネット上で拾った事情をまとめると以下のようになります。
グリーンタウン殿谷は3つの区画からなる。
2つ目の区画まで販売を進めていたが、3つ目の整備の途中で運営会社が倒れた
3つ目の区画は販売前でそのまま放置されて、荒れ果てている
その3つ目の区画と言うのが上記の写真です。
枯れ葉や砂で見えづらいですが、中央を通る道はアスファルト舗装された道で、両サイドは区画整理された土地です。
山の斜面に整備された土地なので、道路からやや高くなっていますが、その上はきちんと均されており、後は家を建てるだけという状態にまでなっています。
運営会社が整備して販売にこぎつけていた1~2番目の区画は、空き区画こそ目立つものの家が立ち並んでいます。
最近になって太陽光発電のソーラーパネルの設置が進み、反射による光害などがローカルニュースで報じられた事もありました。
3つ目の区画もほぼ完成しており、ご覧の通り斜面を上がる階段も整備済みです。
このグリーンタウン殿谷に関しては幾らか過激に報じられることが多いので、今回はその辺りの誤解も解消していけたらと思います。
全く売れていないわけではない
まず一つ目として、運営会社が完成直前で倒れてしまった為、3つ目の区画に関しては全く販売されていないというものです。
これは事実ではなく、会社が倒れて恐らく差し押さえか競売かで土地が第三者の手に渡り、その後に販売が行われています。
頻度は少ない物の不動産情報サイトで売りに出されている事もあります。
例えばこちら。
引用:エクセルホーム不動産情報(https://www.hatomarksite.com/search/zentaku/bukken/6984583359)
こちらの情報は2025年2月時点のものです。
現状は「更地」だそうです。さすがに「森林」とはならないのですね。ちなみに先に完成した第一、第二の区画が面積約300㎡で50万円前後。こちらは10,000㎡なので30倍くらいの広さで10万円です。
なのでこの土地を入手している人もおられます。
主な用途としては家庭菜園と資材置き場です。仕事の資材を置いていたり、恐らく趣味と思われるボートなどの器具を置いたり。
何にも利用していないものの、購入者の名前を掲げた看板だけが設置されている土地もあります。
きちんと均されていて、アクセスもそれほど悪くない場所の土地が格安で入手できるのですから、決して悪条件ではありません。…ただし、これから入手しようという人は土地を覆いつくすように伸びた木々の伐採から始めないといけませんが。
もしかすると今、土地を利用している人は木々が伸びる前に入手したラッキーな人たちなのでしょうか。
全く管理されていない?
私自身が訪れて感じたのがこちらの疑問です。ネットで報じられている話題では全く人の手が入らずに荒れ果てているイメージでした。
木々が生い茂って、アスファルトは割れて落ち葉に覆われて…という状態なので、管理されているという表現は相応しくないですが、実は完全に放置されている訳でもありません。
まずは自治体である赤磐市。
不法投棄などの対策だと思いますが、軽トラックで敷地内をグルグルと運行しています。
頻度は不明ですが私は2度訪れていて、2度とも遭遇しました。尚、別にニュータウン内を歩いていても車から声をかけられたりする事はありません。
恐らく何かしらゴミが放置されていると、そのトラックで回収していくのでしょうか。
それと木々も多少は伐採が行われているようで、上の写真のように積み上げられた様子がみられます。
伐採される事なく普通に放置された状態の倒木類もあるので、何かしらの必要に応じて行われているのでしょうか。
このほかに土地を利用している人でも、同じような事情で枝を落としたりなどの作業が行われているようです。
これが開発から数十年が経過しても、完全に森に吞まれる事なくニュータウンの残り香が漂う程度に景観が保たれている秘訣なのでしょう。
尚、ごく一部だけですが綺麗に木々が伐採されている土地もあります。
販売用でしょうか?それが土地なのか木の方なのかはよく分かりませんが…。
売り土地の看板が出ていないので、個人の所有者が管理している可能性もあります。
ここは木の感じからして伐採直後のようです。
建物が無い…、こともない
先に紹介したエクセルホームの不動産情報によると建物の建造は不可になっていました。
実際にこの3つ目の区画に建物と呼べるような物は確かにありません。
ただ倉庫のようなものは幾つかあります。
こちら。
恐らく家庭菜園など趣味の事を行う拠点として土地を購入したのでしょう
これくらいの建造物であれば幾つか見られます。
別の場所には軽自動車があるのですが、放置車両ではなくそれを部屋代わりに使っていたような雰囲気でした。
住宅地として整備された土地なので、道幅が充分にとられており、土地の外に車を置いても離合は充分に可能です。…そもそも迷惑になるほど人や車の行き来がある訳ではありませんが。
ところでこの3つ目の区画で一番気になったのが駐車場問題です。
この区画は山の斜面に整備されており、2つ目の写真にあるように家に入る為には道から階段で5段分くらいの傾斜を上がらなければならない作りになっています。
なので多くの土地で車を敷地内に乗り入れるのは難しいように見えます。ニュータウンに訪れるバスこそあるものの、車無しでの生活は困難なエリアです。もし住宅地として販売する…となった時、この問題をどのように解決するつもりだったのでしょう。
ちなみに3つ目の区画の入り口に一軒家がありますが、あちらは正確には先に販売された区画の一番端です。
何故か大阪の業者がいっぱい
グリーンタウン殿谷の土地は販売されているというのは先に紹介した通りですが、実際に幾つかの売地看板を見る事が出来ます。
…が、何故か大阪の業者ばかりです。
こちらも大阪。
ちなみに「明光測量設計株式会社」という会社は倒産の手続きは取られていないものの、既に存在しないようです。
これ以外にもいくつかの社名が見られますが、その多くが営業の実態が無くなっている会社で、そして何故か大阪の業者ばかりです。
現地で確認した社名は他に、大阪のオリエント住建、日本フォレスト、近商ホーム、それと兵庫の緑地測建がありました。この中では近商ホームが近年までの活動を確認できました。どうやら近商ホームはこの土地を自社で入手して販売していたわけではなく、ここを購入して使い道が無くて困っている人から宣伝費用を貰って販売代行を行うという商売を行っていたそうです。ただし免許取り消しになったそうで、真っ当な商売だったかは疑わしいです。
開発を手掛けていた会社が倒産し、差し押さえか競売を経て土地が第三者に渡っていったのだと思いますが、それが大阪の業者だったのかもしれませんね。
私はグリーンタウン殿谷の開発に関して情報をほとんど有しておらず、その辺りの事情が分からないのであくまで憶測です。どなたか開発業者の名前などご存じでしたら、サイトのメールフォームからでも送っていただければ幸いです。
→こちら、サイトに情報を頂きました。
こういう売れる見込みの無いような土地をオーナーから宣伝費のような形で有料で販売していた会社なのだそうです。
岡山や地元である関西に限らず、全国各地でこれらの社名の入った看板は見られるそうです。
謎の物体
それともう一つ謎だったのが、この区画内で何個か見られたこの物体です。
ビールケースの上に木の葉このような物体が置いてあります。
そしてこれは一つだけではなく、私が見た限りで4つくらい残っている物と、置いてあったと思われる痕跡を見つけました。
実際に見た時に私が疑ったのはポストです。
土地が安く買えるので、会社の登記などに利用したのかな?と。バーチャルオフィスは安い物の登記に使えない事もありますし、レンタルオフィスは月額料金がそこそこかかるので、10~数万円程度でこの辺りの土地を購入した方がお得になります。
郵便物は転送をかければ問題なく、転送不可の郵便物の為に一応のポストを設置したのかな…なんて想像しました。
ただポストっぽい物ではありませんし、何なのでしょう。
SNSに投稿してみたところミツバチの巣箱では?という意見を頂きました。
サイトのメールでもミツバチで間違いないだろうとありましたので、ミツバチで間違いないようです。時期に訪れたらブンブンブンな感じなのかもしれませんね。
感想
という事でグリーンタウン殿谷の紹介でした。
訪問時はバイクで訪れており、その時の動画もあるのでまた別の記事で紹介します。
こういう際物なスポットが好きな人は多いと思いますので、念のために訪れる際の注意点を挙げておきます。
まずバイクはやめた方が良いです。アスファルトにえぐい亀裂が入っている箇所があるのと、枯れ葉が多くてズルズル滑ります。場所によっては亀裂が枯れ葉で隠れていて唐突にハンドルを取られそうになってしまう事もあり、私自身もヒヤヒヤしながらの走行でした。
なら車なら安心なのか?というと、ところどころで倒木があるのでギリギリの位置を通過する必要があり、枝でボディを傷つけてしまう恐れがあります。もちろんバックで避難して安全な道だけを通る事も可能です。
何が言いたいかと言うと、決して安全な場所ではないのでお気をつけてという事です。
実際に噂通りの場所ではありますが、意外と人の気配があったり、ゴミが無くて管理されている感じが少なからずあったり、思っていたのとは異なるような部分もありました。
私はバイクで一通りと、最終的には徒歩で全て歩いてきました。
尚、人が住んでいるエリアに関しては一部で映像に入る事を嫌うお家があるそうです。撮影をする場合は迷惑をかけないようにしましょう。