一定範囲の建造物や史跡、景観を保護する岡山県独自の制度として「ふるさと村」制度があります。
1974年から指定が始まっており、これは国が同様の事業を行う為に整備をした「伝統的建造物群保存地区」の制度よりも早いものとして知られています。
第一弾で指定されたのが八塔寺を始めとする3か所、第二弾では鉱山から観光へとシフトを進めていた吹屋を含む2か所、そして真鍋島(1978年)、円城(1980年)が指定されて合計7つのふるさと村が誕生しました。
円城以降は新規の指定はされていません。前述の伝統的建物群保存地区の制度があり、ふるさと村に指定すると二重になるので今後の指定は無いのかもしれません。
ふるさと村で最も有名なのは吹屋ふるさと村でしょう。
鉱山として栄え、弁柄の産地としても知られた吹屋ですが、1972年にはそれらも閉鎖。
町の賑わいが失われることが予想された為、新たな産業として観光地への転換を図り、見事に大成させました。
弁柄の色に統一して作られた街並み、そしてお土産や食事を充分に楽しめる店の数々…と、岡山県の中でも有数の人気スポットとして賑わっています。
私も年に一度以上は訪れるお気に入りのスポットです。
しかし。
これは吹屋が観光地を産業とする為に奮闘した事で実現したもので、決してふるさと村=観光地という訳ではありません。
高梁市のふるさと村である石火矢町ふるさと村を訪れた知人から、「ここは何を楽しむところなの?」という旨の連絡を貰ったことがあります。
ここは武家屋敷や土塀といった昔ながらの町並みが残されている事で指定されたふるさと村です。
屋敷2軒が市有になり、資料館として公開されていますが…、観光地としてはそれだけです。
恐らく吹屋のようなショップ街にも似た観光地を期待して訪れたのでしょうが…、実際のところふるさと村でお土産を購入したり、お食事をしたりといった環境が整うのは吹屋と真鍋島くらいです。
かつては八塔寺ふるさと村がある程度は揃っていたのですが、現在は食事や買い物ができる施設は無くなってしまいました。
大高下ふるさと村は阿波民具展示館と兼ねた休憩所の建物が失われて、ほぼ昔ながらの景観が見れるのみ。
越畑ふるさと村はたたら記念館、円城ふるさと村は近くに道の駅で買い物、飲食が出来ます。
景観や歴史を楽しむ場としてのふるさと村は凄く良い場所です。
しかし観光地としては疑問符が残るというか、個人的には吹屋以外はお勧めしていません。(※真鍋島は島なので、別枠として)
例えば円城ふるさと村。
上の写真にある円城寺を中心として栄えた門前町の作りが現代まで残されている点が評価されてふるさと村に選ばれたようです。
しかし門前町とは何ぞや?を知っていて、その形跡を楽しめる人でなければ、首をひねりながら道の駅に移動して買い物をして帰るだけのスポットになりかねません。
過度の期待をしないで!というのは、それぞれのふるさと村を盛り上げようとしている人に失礼かもしれませんが、根本的なところで楽しみ方が違うスポットなのだという事は理解しておいてほしいなと思います。
前述の石火矢町ふるさと村のようなアクセスの良い場所ならリカバリーが出来ますが、大高下や越畑は場所的にも他の観光が楽しめる場所への移動に時間を要しますし…。制度としては既に役割を終えているのでしょうが、残すのであれば県も少し力を入れて欲しいなと。そんな風に思いました。