自治体が夢見る”聖地”ビジネス

2019年8月、アニメ制作で地域活性化を目指すとして、地元企業の出資で設立された”備中高梁まちづくり研究所“が解散した事が判りました。
高梁市の偉人である山田方谷のアニメーション制作などを掲げて2017年にスタートした会社ですが、僅か3年でおしまいです。

高梁市では2014年に、天地無用!シリーズの誘致に成功し、高梁市を舞台としたテレビシリーズ”愛・天地無用!“の舞台となりました。
天地無用!は、アニメに登場した舞台を巡る聖地巡礼と呼ばれる楽しみ方の走りになった作品です。
(リンク:天地無用!の聖地巡礼
設立には市内にある吉備国際大学にアニメーション文化学部がある影響もあると思いますが、備中高梁まちづくり研究所が、この時に味をしめて聖地ビジネスを視野に入れていたであろうことは想像に難くありません。

しかし想定した収益が見込めないとして、今回の解散を迎えました。

聖地は作れるのか?

岡山県内で聖地ビジネスと言えば、倉敷市の観光と連動した”めくりめくる“が知られています。
(リンク:めくりめくるの舞台一覧
倉敷市の倉敷地域に通う高校生たちを主人公に、日々の生活を描いた作品です。

最初こそ倉敷市の観光関連のWEBサイトで紹介されるなどしていましたが、余り盛り上がる事はなく、6巻まで発売されましたが、倉敷観光WEBで紹介されたのは4巻まででした。

個人的には”めくりめくる”のやり方は短絡的過ぎたと思います。
倉敷市を舞台にした作品があり、倉敷の観光がそれをバックアップすれば聖地ビジネスとして多少は成功するだろう。…そんな思惑が見え隠れします。
しかし本来の順序としては作品がありきで、その作品に興味を惹かれるからこそ場所が気になるというのが道筋でしょう。

聖地巡礼とは作品の舞台を訪問する喜びであると同時に、作品のファンが舞台を見つけていく楽しみでもあると思います。
聖地巡礼で賑わった作品を見ても、製作者側から作品の舞台について明示されていない物もあります。

聖地側が露骨に聖地巡礼を促すのは本来の盛り上がりとはやや異なる方向性だと思います。
聖地は作り手の意向で出来る物ではなく、読み手の気持ちから生じる物のはずです。

“めくりめくる”はなぜブレイクしきれなかった?

私は自身のサイトでめくりめくるの聖地巡礼として、1~6巻までの舞台について調べて掲載してきました。
しかし最終巻の発売時点で6巻まで紹介しているサイトはごくわずかでした。
サイトのアクセス数などを鑑みても、聖地ビジネスの失敗例とまでは言わないまでもブレイクしきれずに終わった感じは否めません。
※これはめくりめくるの作品自体への評価、感想ではありません。あくまでも聖地巡礼ビジネスとしての作品への感想です。

この点について舞台が倉敷である必要がなかったことと、キャラクターへの思い入れがあると思います。
前者については多くの作品で背景が倉敷市である事以上に倉敷がピックアップされていないこと。そのまま背景が別の地方都市になっても何の違和感もありません。
そして後者。個人的にはこちらが大きいと思います。
めくりめくるはオムニバス形式の一話ずつが独立した内容で、同じキャラが出ても2~3回程度です。
これでは登場する景色に読者は余り思い入れを持てないのではないでしょうか。

好きなキャラクター同士が何かをした場所、何かを食べた場所…。
舞台(聖地)に行ってみたいと思うのは、そういう思い入れから始まると思います。

その点ではレギュラーキャラクターを作らないオムニバスの形式は、聖地巡礼をもり立てるのには弱かったのではないでしょうか。

最終的には…

色々と書いては来ましたが、最終的には作品の人気が出る事が一番です。
どこまで行ってもそれが一番でしょう。

それについては神のみぞ知るす。鳴り物入りで発表された作品がコケる事もあれば、読み切りで発表した作品が長期連載になるようなことも実際に起こるわけです。

もし聖地ビジネスを狙っていくのであれば、ドラマや映画のロケ誘致よろしくアニメやその原作となる漫画や小説を作る作家の方々に対して、舞台として自分たちの住む地域を売り込んでいく方が有効ではないでしょうか。
聖地巡礼ありきでの作品作りを進めていくのは、非常に難しいことだと感じます。




こちらもお勧め  サカエでクリームたっぷりサンドを食べてきたよ!