林原健氏が死去、78歳 バイオ企業・林原の4代目社長(https://www.sanyonews.jp/article/1061407)
2020年10月13日、㈱林原の4代目社長・林原 健さんが急性心筋梗塞のため北九州市の病院で死去しました。
林原を弟の林原 靖と共に経営してきたものの、不適切経理の発覚で2011年に会社更生法の適用を申請する事態となり、引責辞任していました。
2020年10月13日、岡山が世界に誇ったバイオ企業・株式会社林原の4代目社長、林原健氏が78歳でこの世を去りました。かつて岡山駅前の広大な土地を所有し、「メセナの林原」として文化・研究に惜しみない投資を続けた稀代の経営者の死は、県内に深い哀惜の念を呼び起こしました。
「バイオの夢」と「経営の現実」の狭間で
林原健氏は、霊的な感性を公言するなど独特の個性を持つ一方、研究開発への情熱は凄まじいものがありました。
トレハロースの量産化をはじめとする革新的な技術は、彼の「奔放」とも評される、型に囚われない投資判断があったからこそ生まれたものです。
しかし、2011年。不適切経理の発覚を端緒に、会社更生法の適用を申請。
長年、二人三脚で歩んできた弟の靖氏と共に、経営の第一線から退くこととなりました。
■ 破綻の真実:弟・靖氏が告発した「銀行の保身」
この破綻劇には、今なお議論が絶えない裏側があります。 実務を担当していた弟・靖氏は、自著において破綻の真因を「メインバンクの対応」にあると訴えています。
・指摘の連鎖: 中国銀行と住友銀行(当時)が、内部資料の差異を突きつけたことが発端。
・ADRか更生法か: 自力再建の道である「ADR(裁判外紛争解決手続)」ではなく、強制力の強い「会社更生法」へと舵を切らされた背景には、銀行側の保身があったのではないかという指摘です。
■ 驚異の「弁済率93%」が語るもの
驚くべき事実は、その後の清算過程で明らかになりました。
林原の最終的な弁済率は、なんと93%です。
通常の倒産事案では考えられないほどの高い数字です。これは、林原が保有していた特許や不動産、そして事業自体にいかに高い価値があったかを如実に物語っています。
「帳面上の瑕疵はあっても、事業としては決して倒れるような会社ではなかった」という靖氏の主張には、重い説得力が宿ります。
■ 経営者としての資質と、人間としての魅力
銀行の対応に疑問や異論を発する靖氏とは対照的に、健氏は自著の中で破綻の原因を「同族経営の限界」や「身内間のコミュニケーション不足」など、自分たち組織の内側に求めました。
他者に責を求めるのではなく、自らを引き裂くような内省。
その姿勢は、冷徹な「経営者」としては不器用だったのかもしれません。しかし、だからこそ多くの研究者が彼を慕い集まり、夢のような開発が次々と実現したのでしょう。
■ 結びに代えて
私は研究者ではありませんが、「こういう人の下で働ければ幸せだろうな」 そう感じさせる磁力を持ったリーダーでした。
一つの巨大な才能が去った今、私たちが林原健氏から学ぶべきは、数字の向こう側にある「夢」を信じる勇気と、その夢を支える盤石な組織のあり方なのかもしれません。
心よりご冥福をお祈り申し上げます。
