怪談と言うと大げさなのですが、私の地元で聞いたちょっと不思議な話をご紹介します。
玉野市が出自のある一族のお話し。この一族の男は50代でみんな死んでしまうというのです。
そんな話を聞いたきっかけは町内の方のご葬儀の時でした。
町内の代表のお弔問で母の代わりに顔を出した時の事でした。そこで弔問客らをさばいている男性がおられたのですが、実は私もよく知っている人でした。
通っていた小学校のすぐ隣に住んでおり、田舎の学校なので生徒の殆どの顔と名前を把握していて、登下校時などに顔を見れば親し気に挨拶をして下さっていたのです。
聞けば私の町内の方とご親族で葬儀の受付などの手伝いで来ているのだそう。
…と、ちょうど人が途切れて余裕が出来たようで「自分たちの一族の男はみんな50代までに死ぬ、早死にの一族なのだ」と、そんな話をしはじめました。
確かに私がお弔問に訪れた葬儀で亡くなった方は54歳です。その男性によるとこの方のお兄さんも数年前に亡くなっており、やはり50代だったそうです。その後は私の知らない人の話しですが「親族の〇〇は50ちょうどで」とか「親父も50代の後半だった」とか、そんな話をしていました。
ここで引っかかるのが、その話をしていた相手の男性です。この方は既に仕事を退職していて、年齢も恐らく60代半ば~後半くらいのように見えます。
「親族の内で私のように50代を超えて生き残る者が出てくる。その者が墓守のように親族の葬儀を取り仕切る習慣になっている」のだとか。そして、続けて恐ろしい事をサラッと言ってのけたのです。「今の世代では私がその役目になっている。つまり、うちの親族の他の男は私が死ぬまではみんな50代で死ぬのが確定している」
その一族の男性は50代で死ぬという心づもりで生きているそうです。
最近になってその方の家の近くを通る事があり、この話を思い出しました。
もしかすると葬儀に親の代わりで弔問に来た若造に与太話を聞かせただけなのかもしれませんが、葬儀の場でそんな話をするのか?という気もしないではありません。機会があればその話をもう一度聞いてみたかったのですが、その家にはもう誰も住んでいないようでした。ご年齢を考えると既に亡くなられていてもおかしくはありません。
もしそうだとすると、親族の中で既に新たな墓守が誕生しているのでしょうか…。