玉野市荘内地区にかつて「一家断絶の家」などと呼ばれた心霊スポットがありました。
小料理屋か何か、お店をしていた店舗兼住宅です。詳しくは後述しますが、現在は別の用途で使用されている建物なので場所や建物の写真は掲載しません。
この家に住んでいたのは老夫婦。
彼らには子供がおらず、更に二人とも親兄弟と言った近しい親族が逝去していました。
残されたのは老夫婦だけ。やがてご主人が無くなり、奥様も後を追うように他界し、家には誰もいなくなりました。
最終的に売りに出されたので、辿っていけば相続をする親族はいたのでしょう。
余り住宅があるような場所ではなく、更に店舗兼住宅という事で普通に住むには改装が必要な建物はなかなか買い手がつきませんでした。
そんな中、建物の店舗スペースに老夫婦が佇んでいる目撃情報が頻出するようになりました。それは自分たちのお店だった建物が寂しい状況になってしまっている事を悔やむ老夫婦の姿ではないかと噂されていました。
そのような事が続く中、建物は一家断絶の家などと呼ばれて恐れられるようになりました。
さて、実はこの建物と私の家族はちょっとした関係があります。
私が生まれる前の事です。姉が生まれ、住んでいた建物が手狭になった為に引っ越しを計画していました。新築か中古住宅かと検討していた時に候補に挙がったのがこの一家断絶の家でした。
我が家は荘内地区の出身ではなく、両親はこの建物に関する噂を知りませんでした。
店舗跡なので何か商売をするのも良いかもしれないと見学に行きましたが、そこで何か尋常ではない空気を感じたそうです。
母の話しによるとお店はよくある小料理屋のような作りで、カウンターで客のスペースと調理場が区切られていましたが、カウンターの奥に人がいるような気配を感じたというのです。
そこで不動産屋を詰問したところ、上記のような目撃情報がある事を伝えられたそうです。
もちろん老夫婦はどちらもこの建物で亡くなったわけではなく、いわゆる事故物件に該当するような要件は一切ありません。
不動産屋が状況をどのように考えていたのかは不明ですが、現代の事故物件の告知義務に照らし合わせたとしても問題はなかった筈です。
この経験に懲りた我が家は中古住宅はやめて新築する事になりました。
両親に霊感があるような話は一切聞いた事がありませんが、もう少し鈍感だったら…私はそこに住んでいたのかもしれませんね。
尚、この建物はその後も買い手がつかず、最終的に地元企業が一肌脱ぐような形で買い取って改装して倉庫として利用しています。
改装によって建物の内部の様子が見えなくなった事もあるでしょうが、それ以降は噂は一切聞かれなくなりました。
もしかすると老夫婦は自分たちの家の行く末を見届けて安心して去ったのかもしれませんね。