津山事件と八つ墓村
岡山県でも最も有名な殺人事件、通称「津山事件」。
戦前の岡山県北部で起きた1人の青年が集落の30名を殺害した凄惨な事件です。
この事件に対してよく冠されるのが「八つ墓村のモデルにもなった」というフレーズです。
YouTubeにも津山事件と八つ墓村を結びつけるように扱っている動画が幾つも見られます。
八つ墓村は映画にもなった金田一耕助シリーズの人気作です。著者の横溝正史は岡山県に疎開していた事があり、その際に津山事件を知り、自らの作品に取り入れた…というのはよく知られるエピソードです。この部分は決して間違いではありません。
津山事件は八つ墓村のモデルではない
恐らく作品から津山事件を知り、調べた人も多いでしょう。そして調べてアレ?と思ったのではないでしょうか。
八つ墓村事件の中心は村名の由来でもある八人の落ち武者が殺害された事であり、犯人がそれを再現する事で呪いのように見せかけて殺人の隠れ蓑にしようとするという物語です。
そう、八つ墓村のストーリーは津山事件とは関係のない内容なのです。
津山事件を取り入れた部分は落ち武者伝説に箔をつける為だったり、主人公の生い立ちに暗い影を落とすような演出的なものとして登場するにすぎません。津山事件を参照にした部分をごっそり別の猟奇殺人に入れ替えても八つ墓村の本筋には全く影響しないのです。
なので私は「八つ墓村のモデルになった」とあると、この人は八つ墓村を読んだ(観た)事がないのかな?と思っています。
触れられ具合からすれば、「作中に八つ墓村に模した事件が登場する」くらいではないでしょうか。
ちなみに八つ墓村は岡山県が舞台であり、映像作品が作られる際にもよく撮影が行われています。津山事件がモデルとは言い難いですが、岡山にゆかりの深い作品です。未体験という人はぜひご覧ください。