今回は岡山県で実際にあった話ですが、決して岡山ネタという訳ではありません。
春日八郎さんのヒット曲の「お富さん」の歌詞に「死んだはずだよお富さん」という有名なフレーズがあります。
ヤクザの妾と恋仲になった歌詞の主人公。彼はヤクザに切られ、お富さんは海に飛び込みました。
主人公は生き延びたものの、お富さんは海で死んだものと思っていました。それが生きていて再会する事になり、その時のフレーズが「死んだはずだよ」です。
今の世の中で死んだはずだと思っていたという出来事は余りないと思いますが、実は私の実家近辺の人はそれをリアルで体験しました。
かつてご近所に住んでいた70前後くらいの女性ですが、癌で入院する事になったから家が空き家になるとご近所さんに報告しました。
癌はかなり進行しており、手術も難しい状況。自分が帰って来る事はないから、家の処分はいずれ子供たちがしてくれると思う。さようなら…という、お別れの挨拶でした。今よりもがんの治療が難しい時代で、不治の病に近いイメージさえあった時代です。
それから数年の月日が過ぎました。
みんなその女性は亡くなったものだと思っていました。家は空き家のままでしたが、玉野市でもさほど便利な場所でもないので空き家がすぐ売れる事の方が珍しく、誰も疑問を抱いたりはしませんでした。
で、ある日その女性が歩いていたんです。
さすがに驚くというか、失礼な話ですが「死んだはずだよお富さん」の世界です。
似た顔の親戚とか、そういう可能性も考えつつ挨拶をしてみると…、やはりご本人でした。
死ぬつもりで身辺整理をして入院したものの、病状が奇跡的に好転して手術が可能な状態になったのです。そして長い闘病生活の末に退院。
しばらくは子供と同居していたものの、体力も回復してきてきままな一人暮らしに戻ろうと帰ってきたのです。その後も健やかに老後の生活を楽しみ、かつて別離の挨拶を交わしたご近所さんの多くよりも長生きされ、今は鬼籍に入っておられます。
しかし上記のような経験から、また出くわして驚かされるのではないかと、そんな事をたまに考えてしまいます。