先日、田中美術館がリニューアルされたのを見てきて、ついでに田中苑も歩いてきました。
美術館のほぼ正面にある公園で、園内には平櫛田中の代表作である鏡獅子を始めとする5つの作品のブロンズ像が展示されています。
公園としてもキレイに作られているので、美術館を訪れた際はぜひ散策してみて下さい。
ところで公園の奥には平櫛田中の有名なセリフの石碑があります。
「いまやらねばいつできる わしがやらねばたれかやる」
即断即決即実行を促す言葉です。
私には座右の銘と呼ぶような言葉はありませんが、もし1つ決めるのであればこのフレーズを拝借したいと思います。
これは私自身が運営する岡山県の地名の由来や郷土史を扱うサイトの「岡山の街角から」にも通じる部分があります。
昔の郷土史の本を読むと地区の「古老」と呼ばれる人物がよく登場し、地区の歴史や言い伝えを郷土史家に教えてくれます。
しかし今の時代ではそういう人と出会える機会自体が稀有で、もしいるとしても、地区の住民の方から「あの人がここらへんの歴史に詳しいよ」と紹介されるような事はほぼありません。そういう歴史を本にしてきたのが吉岡三平、岡 長平、巌津政右衛門といった先人達です。
しかし彼らの本も古くなり、郷土史という狭いジャンルの中で再販される可能性も限られます。
もっぱら図書館の郷土史コーナーでも行かない限り、地元の歴史を知る機会が失われつつあります。
私がネットで郷土史に触れられる場をつくろうと思った精神こそ、「いまやらねばいつできる」という語り部がいなくなりつつある故郷の歴史への焦燥感であり、「わしがやらねばたれがやる」という自負です。
平櫛田中は107歳で亡くなり、晩年まで作品を作り続けたそうです。私も次の世代へ郷土史が語り継がれることを確認できるまで、ネットの片隅で語り続けていこうと思います。