GOOD ROUTEとは何ぞや
岡山市の市街地を走っていて、GOOD ROUTEという横断幕があるのを見かけました。
気になっていたものの、特に調べずにいたらKSBで特集が組まれていました。
「デザインの力」で人々の行動を変える…国道2号の渋滞緩和プロジェクト
道路の渋滞緩和に向けたGOOD ROUTEプロジェクトというプロジェクトが立ち上げられたのです。
国道2号は特に岡山~倉敷周辺で朝晩の通勤ラッシュ時に酷い渋滞が起こります。
これを解消すべく道路の高架化、車線の追加などハード面の進捗と並行して進められる企画で、ルートを再考する事を呼び掛けるものなのだそうです。
ここでいうルートとは単純な道だけではありません。
車から公共交通手段へ、自転車へ、徒歩へ。
そして出発時間の調整等などで、移動する人たち自身が自分たちにとってよりよいルートを考えるというコンセプトです。
ロゴや字体などにプロのクリエイター陣が関与する事で、より受け入れやすいように工夫してあるそうです。
それがKSBの記事にある「デザインの力」です。
今後は出勤時間を早めるメリットとして、飲食店などに早朝の割引などを呼び掛けていくそうです。
感想
個人的な感想としては、半分は賛同で半分は異論です。
先ずは賛同から。
ルートについて考える事は凄く良い事だと思います。
行く先が遠い場所だと難しいですが、近場なら同じ地点からの移動でも、渋滞で流れの悪い車と、普通に移動できる自転車で所要時間に大差がないという事はまま有ります。
渋滞情報を取得できるナビ、例えばスマホナビなどを使って移動すればその時ごとの交通事情に合わせてルートを最適化させていく事も可能です。これは私自身も行っていて、意外と効果的です。
しかし自家用車で移動する限り、流れが遅くても車内では運転以外の事は出来ません。
それを公共交通機関に変更すれば、移動時間が自由時間に変わります。
音楽やオーディオブックでも運転しながらより集中して聴けるでしょうし、読書やゲームなどの完全に手を奪われる娯楽にも割り当てる事も出来ます。もちろんうたた寝も出来るでしょう。
大都市のように公共交通手段が各地に網羅されているわけでもないですし、自家用車で通うしかないような場所も多いとは思います。
しかし可能性を探ってみるのは面白いでしょう。今なら実際に試さなくてもGoogleマップなどの機能でかなり正確な数字を割り出す事も可能です。
もしかするとルート以外にも自家用車以外の可能性があるかも知れません。
次は異論です。
今回のプロジェクトの成功事例、先例としてファジウォーカーが挙げられています。
サッカーチームのファジアーノ岡山の試合を見に行く際に、岡山県総合グラウンドにあるホームグラウンド周辺の渋滞を緩和する為に自家用車以外での来場を呼び掛けたものです。
確かにこれは凄い成功事例です。以前は試合がある日はただでさえ混雑する周辺が更に混雑するという悪循環だったのが、最近はかなり改善されました。
オシャレな呼び方をつけるのも、うまいやり方です。
彼らは自家用車での来場をやめたのではなく、ファジアーノ岡山の方針に賛同するファジウォーカーになったのです。
しかし時間の調整がしやすいサッカー観戦と、通勤時のラッシュは同列には語れないでしょう。
恐らく今回のGOOD ROUTEプロジェクトのコアである「出発時間を早める」。
この取り組みは2019年4月にも岡山国道事務所、岡山県が連携して行っています。
その時の動画が同じくKSBのYouTubeチャンネルに残っていたのでご紹介します。
出発時間を1時間早めると通勤時間を10分短縮できます。
通勤時間を10分短縮できるという所に刮目してみれば「そうなのか!」と思うかもしれませんが、冷静に考えてみて下さい。
会社に1時間10分も早く着いて、どうするのですか?
今回のプロジェクトでは民間のモーニングの割引を拡充するように呼び掛ける事や、朝活への有効利用を呼び掛けています。
しかし朝は分単位で時間に追われるような人が大半でしょう。
家庭があれば、朝、特に朝食は慌ただしくも貴重なコミュニケーションの時間でもあります。小さな子供だと準備を手伝ってあげる必要もあるかも知れません。
それを通勤時間短縮を主体に変えていこうというのは、いかにもお役所的な目線にしか感じません。
朝、10分の通勤時間の短縮の為に家族とのコミュニケーションを犠牲にしますか?
目線が通勤をしている人の生活に向いていない内は、GOOD ROUTEの呼びかけは浸透しないのではないかと思いました。
最終的な成果が公表されるのかどうかは分かりませんが、個人的には凄く興味深いです。
岡山市では国道2号の渋滞緩和に向けた大々的な工事も進んでいるので、GOOD ROUTEだけの効果というのは割り出しにくいかも知れません。しかし呼びかけで渋滞緩和の効果が出るのであれば、公共事業のあり方さえも変えてしまうほどのインパクトになるでしょう。