宇高路線、旅客で再開は!?
2021年11月21日の山陽新聞の朝刊に、玉野商工会議所のトップの面々が柴田新市長を訪問した記事が掲載されていました。
新市民病院における小児科、産科の充実、そして宇野光周辺の環境整備などの要望が上げられました。
その中で注目すべき点は宇高航路の再開への提言でしょう。
記事から抜粋してみると、
・旅客船(人のみを乗せる船)を1日4往復
・それに掛かる費用は年3,000万円(※商工会議所の試算)
・時限的に社会実験を実施したい
…という事です。
「フェリー」での再開は非常に難しいでしょう。多額の補助金を受け取っていた四国フェリーでも撤退を選ばざるを得なかったのが現実です。
しかし旅客船や過去に連絡船で運行していた高速艇のような固定費を落とした形での可能ではないかという声は、休止している宇高国道フェリーの関係者からも聞いたことがあります。
現状でフェリーが無くなって特に困っているのは、実は自転車と小型バイクの人たちです。
瀬戸大橋を利用できない彼らは愛車を伴って岡山から四国へ渡る手段が無くなっています。
旅客船でも船によっては自転車の積載が可能です。小型バイクは難しいと思いますが、自転車に対応できればフェリーには一定の観光需要があります。(※厳密には自転車は折りたたみ式の物は折り畳んで、それ以外は分解して袋に収納すれば持ち込み可能です)
玉野商工会議所は市長選で現在の柴田市長を応援していました。
当選すればこの話を前に進ませる事に協力する事で既に折り紙付きでしょう。社会実験が行われるのはほぼ間違いないと思います。後は実験の結果次第という段階に進んでいると考えていいでしょう。
どうする、価格!? ちょっと考えてみた!
ネックは客単価をどうするのかです。
かつての宇高国道フェリーが往復で700円(大人)という料金設定でした。
ではこの価格のままの設定で少し考えてみましょう。今回は行ったら帰るだろうという事で、往復料金で計算してみます。
尚、行きは船、帰りは橋(電車)という楽しみ方をする人が多い場合は片道のみの利用の計算も入れることになるので、此処から先の計算は変わってきます。
仮定条件の多いシミュレーションということでお楽しみ頂ければ幸いです。
まず商工会議所の試算では年に必要な予算は3,000万円。明細は出ていませんが、3,000万円を稼ぎ出せば赤字にならない損益分岐点と判断して良いのでしょう。
玉野市、高松市や県からの補助金も出せれば損益分岐点は更に下がります。
まず取らぬ狸の皮算用で補助金が500万円出たとして、損益分岐点を2500万円とします。
かつての宇高航路の価格設定では年間に約3万6千人が乗る必要があります。
四国フェリーが休業する前年度の2018年度のフェリーの利用者は約13万人ですが、この中にはトラックや自家用車も多く含まれているはずです。特にトラックの運転手は旅客で再開した場合に戻ってこない客です。
四国フェリーでトラックの利用が多かったのは移動距離を稼ぎなら必要な休憩が取れるというメリットがあった為で、車が乗れない旅客船を利用する事はありません。
更にこの数字は片道ずつで計算しているはずなので、今回の前提とした往復での計算の場合は半分にする必要があります。となると6万5千人。
旅客のみで3万6千人は厳しい数字のように思えます。
往復700円という値付けは自動車からの大きな収益が見込めた上での設定なので、実際にはもっと引き上げて考えるべきなのかも知れません。
ただし航路には同じく高松へ向かうJR瀬戸大橋線というライバル路線があるので、そことのバランスも必要です。
JRを使って宇野or岡山~高松間を移動する場合は往復で3,100円です。(※ここから先の価格はすべて2021年11月時点)
例えば岡山駅から宇野駅に船に乗るためにやってきてくれる客を見込むと、電車で岡山駅~宇野駅は往復1180円(片道590円)なので旅客船を往復1,920円にすれば乗客の負担額は対等です。
しかし岡山駅からの乗車の場合は岡山~宇野までの移動には約50分もかかります。金額が変わらずに小一時間も余計にかかるというのは大きなデメリットです。
船に乗れるという特殊体験があるとしても同じ価格では厳しいでしょう。
少し金額で勝負をして、往復1500円~1800円くらいではどうでしょう。岡山駅から来る人でも少しお買い得感が出て、更に港が近い玉野市民はグッと安くなります。
往復1500円なら年に約16,700人が乗車すれば、そして往復1800円なら約13,900人が利用すれば損益分岐点に到達します。
ちなみにもしも補助金が出なかったとしても往復1800円の設定にすれば約16,700人/年の乗船で損益分岐点に到達します。
私の率直な感想としては、そのくらいの数字なら可能性はあるのでは無いかと思いますし、フェリー乗り場までの費用が少ない玉野市民なら瀬戸大橋線を利用する人はいなくなるのではないでしょうか。
この市民へのお得感は玉野市から補助金を捻出する根拠にもなり得るでしょう。
ただし玉野市民である私の利用頻度は数年に1度位だと思います。
玉野市から同じくらいの所要時間でより安く岡山市街地へ出ていけるのです。
高松が魅力的な都市なのは間違いありませんが、岡山市よりも大いに栄えて高松に行った方が買い物がはかどるという事はありません。観光以外の目的で高松へ向かうことはないでしょう。
徒歩で高松観光に降り立つ機会…となると、多く見積もってもその程度の頻度だと思います。
逆に高松の方が都市としての規模で劣る玉野に来る事も非常に少ないと思います。