倉敷市美観地区周辺 町家637棟 NPO調査、「町の財産」保存を(https://www.sanyonews.jp/article/998195?rct=area_content)
倉敷に保存されずに残る多くの町家
山陽新聞にNPO法人倉敷町屋トラストが調査した、美観地区周辺の町家の残存状況の記事が出ていました。(※リンク先は会員限定記事です)
同法人が町家の定義としたのは下記の条件です。
・江戸時代~1955年頃までに建てられた建物
・玄関が通りに面している
・伝統工法で建てられている特徴が確認できる
調査範囲は倉敷駅南側約80ヘクタールです。
この条件下で当てはまる町家は637棟です。
残存数が多い順では船倉町の113軒、阿知3丁目が110件、阿知2丁目が101軒です。
これらの建物は保存対象になっていないので、徐々に解体や建て替えが行われています。
同法人が資料を作成したのは、これらの町並みの保存に対してどう残すのか、町づくりについて考える為だったそうです。
町家を保存するメリットを考える
まず僕自身の立場を明らかにすると、僕は保存して欲しい立場にいます。
このブログでも看板建築や古い日本家屋などを良く紹介しており、昔ながらの街並みが好きです。
もし倒してしまえば、古民家風の建物を建てても、それは取り戻せません。
古い物に価値を見出すという観点はもちろん、美観地区の観光産業を中心とした倉敷の街づくりにおいても、美観地区周辺が現代風の建物で溢れるよりも良いと思います。
更に踏み込んでいけば、美観地区の観光エリアを広げる事も出来るでしょう。
現在、倉敷美観地区では家賃の高騰が問題になっています。
今後もその傾向は続き、昔のように個人でオシャレなお店を出す…というのは難しくなっています。
実際、最近の美観地区の出店はある程度資本力のある企業によるものが目立ってきています。
美観地区の郊外のような場所が出来る事で、個人でも古い街並みに合わせたお店などが出店しやすくなるというのは大きなメリットではないでしょうか。
町家はどこまで保存すべき?を考える
今回はあえて反対目線から町家をどこまで保存すべきなのか?についても考えてみました。
まず「どこまで保存すればいいのか」という点があります。
保存すべきだというのであれば、そこには公的な援助も必要になるでしょう。
逆に「美観地区だけで充分ではないか」というのも一つの答えだと思います。
過度に保存を進め過ぎれば、倉敷の市街地の発展の阻害にもなりかねません。
倉敷市は美観地区という一大観光産業を持つと同時に、中核市であり岡山県第二の都市という側面もあります。
市街地の中心部で過度な保存を行えば、周辺の土地にも何かしらの規制が敷かれて都市の発展を阻害する恐れもあります。
あえて現在の美観地区までに保存を留めておくのも一つではないでしょうか。
感想
という事で、僕自身の素直な保存して欲しいなという気持ちと、逆に保存しない方が良いのでは?という立場に立って色々と書いてみました。
ただ僕は外野の人間です。
最も重視すべきはそこに住んでいる人の気持ちなのは間違いありません。
町家で暮らしている人にも、将来的にはバリアフリーだったり様々な利点がある最新の住宅に住みたい、建て替えたいという気持ちを持っている方はいるでしょう。
そこに住んでいない方でも、例えば土地がもう少し高騰した時点で売ってお金にしたいという思いを持っている方もいるでしょう。
貴重だから保存したい…と、暮らしている人は別です。
しかし自分の家の価値を大切に思っている人がいて、その方が町家を受け継いでいく事を模索しているのであれば…、それが倉敷市でも、倉敷市以外の市町村でも。
何かしら保存を協力していけるような制度が出来ればいいなと思いました。