芸備線“存廃”を含め議論…とJR側が初提案 今後の行方は?利用促進検討会議【岡山】(https://news.yahoo.co.jp/articles/089bed199a5e08a04e9c08014fc2f5f1a1ac5237)
新見市を走るJR芸備線の利用促進策を話し合う会議が5月11日開かれ、JR側が初めて存廃を含め今後の路線のあり方を議論したいと提案しました。
芸備線は廃止も視野になるほどの状態なの?
コロナ禍でJR西日本自体の体力も削られたのか、ここ最近は各地で路線の存続についての話題が出ています。
その中で岡山県で議論になっているのが、新見市を通る芸備線です。広島市やその周辺では高い数字も記録していますが、全国でもワーストに数えられる状況の閑散区間もあります。
今回のJR芸備線の利用促進策についての会議では、ついに廃線も視野に入れた議論をJRが提案してきました
先にJR西日本は営業係数が大きい路線を公開しました。
営業係数は100円を稼ぐのに幾らかかっているのかを示す数字です。
その中で最大の営業係数を記録したのが東城駅~備後落合駅間で、なんと25,416。
100円を稼ぐのに2万5千円もかかっている事になります。
岡山県内の区間でも備中神代駅~東城駅が公開された中でワースト3位の4,129です。
つまり100円を稼ぐのに4,100円以上がかかっている状態です。
JR西日本が赤字ローカル線についての発言をすると、鉄道を民営化するべきではなかったという声が出てきます。
しかし今回JR西日本が見直しの基準としたのは輸送密度2000人未満ですが、国鉄の基準は4000人。
先に上げた東城駅~備後落合駅間は輸送密度は11人。時代の違いもあるので一概には言えませんが、公営のままだったら既に芸備線は無くなっていたのかもしれません。
反応と対策
記事中では岡山県側から会議に参加した人のコメントが掲載されています。
ちょっと引用させていただきましょう。
岡山県県民生活部 池永亘部長
「我々としてもこの場で初めて聞いたので、自治体の中で検討した上で、幹事会に諮っていくと今の時点では思っている」
このコメントは甘いと思います。
去年(2021年)6月にはJRから芸備線の在り方について協議の申し入れがあり、実際に協議されてきました。
直接の言葉は無かったにせよ、申し入れの裏には廃止も視野に入っているのは誰もが分かっていた筈です。
「初めて聞いた」はすっとぼけすぎでしょう。
新見市 野間哲人副市長「利用促進を図っていくということは変わらないスタンスとして、幹事会で調整していくことになると 受け止めている」
野間さんのコメントは苦しい状況を物語っています。
芸備線ではラッピング列車や格安チケットなどの対策は行ってきています。
残念ながら高い効果が得られない為に今回JRが更に踏み込んだ発言に至りました。
それでもそれ以外に方策がない…、だからこそ「変わらないスタンス」という言葉が出てきたのではないでしょうか。
感 想
イベントでJRの求める人数を達成しようとするのは難しいというより、無理があるでしょう。
一時的に伸びることはあるかも知れませんが、どこかで飽きられて沈んでしまいます。定期的に人を呼べるようなイベントを生み出すのは容易ではありません。
つまり定期的に使う人、つまり地元民が活用するような状況が必要です。実際に周辺では電車を使わずに自家用車やバスを使っている人も多いそうです。
しかし彼らが電車を利用するようになったとして、それで解決するのかというと、私はそれも難しいと思います。
こちらを御覧ください。
備中神代駅周辺、旧神郷町の中心部です。
そもそも芸備線の閑散区間は沿線住民の人口が少ないのです。
新見市が合併前の旧町の人口を出しています。平成27年なので少しデータが古いですが、芸備線の沿線に位置する地区では神郷町が1856人、哲西町が2497人。
新見市全体の高齢化率は令和3年で約42%。そもそも通勤/通学で定期的に電車に乗る可能性がある人口自体が少ない。
住民の協力が得られても、JRの求める数字に満たせない可能性があります
野間副市長の言うように利用促進で解決するには、沿線に引っ越してもらうような人口問題の施策が必要になるのではないでしょうか。
短期での解決は無理ですが、JRが将来性を感じるような内容ならあるいは。
しかしそれ以外だと、もうお金での解決しか無いのではないでしょうか。
JRに何らかの形でお金を出して存続するのか、路線は無理と割り切って廃線後にバスを走らせて利便性の穴埋めをするのか。
個人的には後者(お金)が現実的、そういう段階に入っているのではないかと思いました。