サイトの小説や映画などの舞台になった岡山のスポットを紹介するコンテンツに、内田康夫の「歌わない笛」を追加しました。
この作品は津山市の作陽音楽大学の移転がテーマに扱われています。
殺人事件なのでこの計画に対抗する大学新設案があったり、決してノンフィクションではありません。
しかし大学移転にまつわる様々な問題についてはしっかり触れてあって、内田康夫先生の取材力の高さに舌を巻いた次第です。
主な舞台は津山市、そして倉敷市と岡山市も登場します。
多少のネタバレを含むので、未読の方で今後この本を読んでみたいと思っている方はご注意下さい。
大学跡の隣接する場所には移転後に廃業した津山プラザホテルの跡地もあります。
作品中の解説によると、音大の受験は早めに津山入りをして最後の仕上げを行うなどホテルにも小さからぬ影響があったそうです。
ホテルの近くには既に入居者がいなくなり、廃墟化したアパートもあります。
これも学生向けに作られていたのでしょう。
これが大学が移転するということの影響なのだなと思いました。
その原因をどこに求めるのか?というのは難しい問題です。
移転を決めた学園側にも将来的な少子高齢化への対策や県外からの教員の募集のために新幹線駅に近い場所を選ぶのは生き残りの為に重要な方策です。
それを止めることができなかった津山市などの責任か?と言えば、人口減少は日本全体の問題ですし、豊かな資金力や好立地を持つ倉敷市との競争で大学を引き止めるのは難しいでしょう。
だからといって誘致を行った倉敷が悪役とも言えません。
作陽音楽大学は倉敷からの誘致を受ける以前に移転を前提として岡山市の土地を購入しています。
倉敷が手を挙げようと挙げまいと、移転は既定路線だったのです。
このような小難しい問題を意識しながら読む作品ではありませんが、ちょうど学園の高校も倉敷への移転が迫ってきているというタイミングで、非常に興味深く読ませていただきました。
これは岡山だけではなく、高齢化や人口減に苦しむ全ての自治体で起こりうる問題です。
学校を引き止めるために何が出来るのか、何をするべきなのか…というのは、多くの自治体が考えていくべき課題のように感じます。