三井E&S、防衛艦艇事業譲渡へ 三菱重と協議、玉野での建造は継続(https://news.yahoo.co.jp/articles/723ce77f5a9aedb2abcba5c10dd3f1a10c4991ac

2020年6月12日、三井E&S HDは同社が手掛ける防衛省向け艦艇事業を三菱重工業に譲渡する協議を始めた事を発表しました。
2020年8月5日には積み貨物船などの商船建造の終了も発表、生産は提携先へ委託する方針です。

三菱重工業との提携の概要

三井E&Sホールディングスが子会社の三井E&S造船で行っている防衛省向け艦艇事業を三菱重工業に譲渡する協議を進めています。
三井E&Sの公式サイトでの発表はこちらです。

本譲渡により、三菱重工業は、同社の製品や技術の拡充を図り、更なる我が国の安全保障への貢献、企業価値の向上につなげることを目的とする一方、当社は事業再生計画に基づいた造船事業の協業展開を一歩進展させることになり、自社の強みの部分をより一層活かすことができるため、結果として両社の艦艇事業において持続的な成長を実現することが可能となると考えております。
なお、本譲渡の対象事業に関わる建造及び修繕については、本譲渡後も玉野艦船工場で継続する予定です。
今後、当社、MES-S 及び三菱重工業の間で詳細な検討を実施し、具体的な対象事業の内容及び範囲並びに譲渡方法等について確定すると共に、2020 年 12 月末を目途に最終契約書を締結し、2021 年 10 月に本譲渡を完了させることを目指します

社名などでややこしい部分があるので冒頭部は省略しましたが、本譲渡というのが防衛省向けの艦艇事業の事です。

そして三菱重工業の公式サイトでの発表はこちらです。

三菱重工業と株式会社三井E&Sホールディングス(以下、三井E&Sホールディングス)は、当社が三井E&S造船株式会社(以下、三井E&S造船)の艦艇事業を譲り受ける協議を開始することについて合意いたしました。

三井E&S造船は、補給艦や海洋観測艦といった防衛省向け艦船の建造や修理に強みを持ち、また近年では自律航行や遠隔監視といった新技術の開発にも積極的に取り組んでいる企業です。
一方で当社は陸・海・空にまたがる防衛装備品事業を一元的に運営し、技術的シナジーを発揮する中で、機能・性能ならびにコストパフォーマンスに優れた最新鋭の艦艇を開発・設計・建造してまいりました。
今回、三井E&S造船が営む艦艇事業を譲り受けることで、防衛装備品事業における製品や技術の拡充を図り、我が国の安全保障への更なる貢献、企業価値の向上を企図しております。

今後、当社、三井E&Sホールディングス及び三井E&S造船の間で詳細な検討を行い、2020年12月末日を目途に最終契約書の締結、公正取引委員会等関係当局の必要な審査を経た上で、2021年10月を目途に譲渡受けの完了を目指します。

ポイントをまとめると、下記のような感じです。
・三井E&S造船の防衛省向けの艦艇事業を三菱重工業へ譲渡
・2021年10月に譲渡完了を目指す
・三井E&S造船のグループ従業員900名は転籍、出向などの形でそのまま雇用を確保する
・三菱重工業も艦艇建造は玉野市で行う

商船建造の終了についての概要

防衛艦艇事業の譲渡から少し後に発表された商船建造からの撤退。
こちらは生産を揚子江船業、常石造船へ委託する方針です。

2020年4~6月の時点での商船の受注はゼロ。
三井造船には残り5隻の受注がありますが、それを完成させた後は上記の提携先に建造を委託する事になります。
時期は2021年10月が目途とされています。

従業員に関しては配置転換と、常石造船などへの転籍などが検討されています。
三井E&Sのグループとしてはこれらにより2000人の削減を目指しています。

尚、完全に譲渡する防衛艦艇に対して、商船については状況の改善に伴って自社生産に戻す可能性もあるそうです。
ただし従業員を手放してしまえば、それも簡単な道筋ではない筈です。

どうなる、玉野市?

出ている情報が少ないのと、協議自体もこれから詰めて進められるので決まっていない部分も多いのだと思います。
今の時点で見えているのは、短期的には船の製造に携わる従業員は勤務先の会社は変わるかもしれないけれど、玉野市で船を作る仕事に携わり続けることが出来る事でしょう。

この発表の後に行われた三井E&Sの社長のインタビューでは、玉野事業所での製造が濃厚である事が語られています。
ただしそれは三井が現時点で受けている建造までで、それ以降という長期的なスパンでの話まではついていないようです。

そして同じく気になるのは下請け、孫請けといった市内の中小規模の取引先です。
三井E&Sは好調なエンジンなどを作る事業を中心とした企業に転換するようです。
それ以外で関わってきた企業が、新たに三菱と契約が出来るのか?

三菱重工業は三菱グループなのでグループ内で発注を出さないといけない企業もあるかもしれませんし、金額等の面での折り合いも必要でしょう。

三井E&S造船の企業城下町である玉野市には関連する会社が多く存在します。
グループの従業員だけを守られるのでは、市内で倒産ラッシュと失業者が溢れることになりかねません。

三菱重工業にはその辺りも考慮して頂いて、出来る限り影響が出ない形を採って頂ければと願うばかりです。




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