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倉敷・博多殺人ライン 舞台探訪
深谷忠記の旅情サスペンスシリーズ、壮&美緒の倉敷と博多、山口を舞台にした「倉敷・博多殺人ライン」の中から倉敷の舞台を紹介します。
作中に登場する倉敷の非常に詳細な描写は実際の風景そのままです。
尚、本文中に多少のネタバレを含みます。犯人の名前やトリックは記載しませんが、これから読む予定という方はご注意下さい。
目次
目撃者・馬場編
倉敷美観地区に到着 駅倉敷観光 駅までのルート
事件調査編
第一被害者 倉敷中央警察署 今井刑事の捜査
壮&美緒編
倉敷美観地区 鷲羽山~美観地区
目撃者・馬場夫婦編
作品の冒頭は被害者の目撃者である馬場夫婦、特に夫の視点から始まります。キャラクターについて細かい設定なども出てくるので、事件の主要人物になるのかと思いきや本当にただの目撃者でした。
倉敷美観地区に到着
馬場夫婦は倉敷駅前の大通りを「十四、五分歩いて」倉敷美観地区に来ました。
そこは「土産物の間を百mほど進み」大原美術館の前に来るということなので、倉敷中央通り経由で美観地区入口交差点から倉敷川の方に入っていったようです。
なので作品冒頭で夫婦が見た風景はこの辺りでしょう。
ちなみに夫の最初の印象は「人が多すぎる」でした。
倉敷観光
まず、大原美術館へ。
そして橋を渡って倉敷アイビースクエアに向かいます。
大原美術館の写真の右端に映る児島虎次郎デザインの今橋も捨てがたいですが、観光の王道をいく馬場夫妻ならこちらでしょう。
そして倉敷アイビースクエア。
倉敷紡績の創業の建物を観光向けにリニューアルした施設で、ホテルやショップなどを含む観光スポットになっています。
名前の通りアイビーが覆われた建物が特徴です。
関連リンク:倉敷アイビースクエア
ここで夫婦は別行動になります。
この先は夫の方の動きです。
(写真提供:岡山県)
前述の中橋から見える風景で有名な建物です。中は吉備地方を中心に考古学の資料が展示されています。
観光地にはありますが、少し毛色の違う施設です。
生活に用いられる道具を展示した施設で、倉敷美観地区における旧家の観光向け転用の第一弾だったそうです。
駅までのルート
馬場夫婦の夫の観光は倉敷民藝館までで一応終了です。
それから先は美観地区を散策しながら、倉敷駅に向かって歩き始めます。
まず選んだルートは「考古館の横から裏手の道」です。
美観地区の第一印象でも告げていたように人混みに辟易としていたようで、余り混雑していない場所として選んだルートです。
考古館の裏手は上の写真のように観光客向けのお店も少なく、倉敷美観地区の中では最も空いている辺りです。
「古い土塀と暗い板塀の続く古い街並みである」という表現の通りの風景です。
ここから本町通りに出たようで、鶴形山の阿智神社の手水舎の辺りに来ました。
上の写真の方向が実際の左方向です。
ここから山を抜けて観龍寺に向かうルートへ進みます。
実はこのルートはかなり遠回りです。
考古館の裏の道から駅へ向かうなら、夫婦が来た倉敷中央通りのルートを目指すか、えびす通り商店街を通るのが普通です。
山道経由では倉敷美観地区の昔ながらの景色も楽しめませんし、結局は山の中を通って再び上記の通常ルートに接続することになります。
よほど人混みを避けたかったのでしょうか。
阿智神社から山を進むルートを進むと最終的に観龍寺という寺院にたどり着きます。
ここで門前の眺めを楽しんでいます。上の写真が実際に寺の辺りから見える倉敷美観地区の風景です。
この時にすれ違ったのが、後の第一被害者となる男性です。
宿泊先のホテルは倉敷ユニバーサルホテル。
大原美術館と倉敷中央通りを挟んで反対側にある倉敷駅前ユニバーサルホテルの事でしょう。
ここで目撃者として警察に男の様子などを話しました。
ちなみにこの後の行程も紹介されていて、レンタカーを借りて同市児島地域の鷲羽山で観光し、瀬戸大橋を通って四国へ行く予定になっています。
事件捜査編
続いては倉敷での殺人事件の現場などを紹介していきます。尚、この記事中で触れるのは倉敷での舞台のみです。
第一被害者の死体発見場所(鶴形山公園)
殺害現場は鶴形山公園の阿知の藤の下です。
遺体の司法解剖を行ったのは岡山医科大学です。
これは岡山大学医学部の事でしょう。著者が知ってか知らずかは不明ですが、岡山医科大学は岡山にかつて実在しています。
岡山藩医学館を起源とする学校で、現在の岡山大学医学部に繋がります。
事件の起きた鶴形山公園は鶴形山の概ね全体を指して公園としており、特別に公園施設があるわけではありません。死体発見場所の阿知の藤も公園内に含まれます。
阿知の藤はアケボノフジの巨木です。
樹齢は300年、500年とも言われ、樹勢にはやや陰りが見られます。
現在は治療が進められており、2021年には多少の花が見られるようになりました。
倉敷中央警察署
事件を担当するのは「倉敷中央警察署」ですが、この警察署は実在しません。
倉敷市倉敷地域の警察署は「倉敷警察署」で、美観地区から北に位置する同市大島にあります。
作中の設定では、
・住所は倉敷中央2丁目
・市立美術館、自然史博物館、図書館の並びにある
・倉敷駅から南に伸びている倉敷中央通りの西側
…と、このようになっています。美術館、博物館、図書館は実在の施設なので、そこに並ぶように警察署があるという設定のようです。
ちなみにこの場所は馬場夫婦が宿泊した倉敷ユニバーサルホテルのすぐ南隣です。
今井刑事の捜査
作中では倉敷中央警察署の今井刑事の捜査が描かれます。
今井刑事は他の警察関係者が阿知公園に阿智神社からのルートで行くであろう事から、自分は別のルートを進む事にしました。
それが被害者を目撃したという馬場(夫)が通ったのと同じ、観龍寺側からの山道を抜けて阿智神社方面に向かうルートです。
トンネルの入り口で車を降りると、左側に見える階段を上がっていきます。
関連リンク:鶴形山隧道
観龍寺の寺門から横にそれて細めの道が続きます。
この道を進むと、途中で右折できる道が現れます。
これが今井刑事、そして馬場(夫)が通った道です。
前述の通り観光的な要素には乏しく、余りこのルートを通る人はいません。
この道を進んでいくと先に馬場編で紹介した狛犬のいる道に出ます。
壮&美緒編
続いては主人公の二人の倉敷訪問です。余談ですが訪問日は11月13日、曜日は金曜日でした。本が発売された1992年の11月は実際に13日の金曜日です。
倉敷美観地区
壮と美緒は別々に倉敷に向かい、倉敷アイビースクエアの広場を待ち合わせ場所にしました。
(写真提供:岡山県)
アイビースクエアの西門から本町通りに進み、そこから阿智神社の手水舎を左折…という、馬場が通ったルートで被害者が目撃された現場を確認しています。
写真は今井刑事編でご確認下さい。
そこから死体発見場所の阿知の藤を確認しました。
鷲羽山~美観地区
13日の調査を終えた二人はバスで鷲羽山の麓にある「瀬戸大橋の見えるホテル」に宿泊しています。
麓と言う条件でまず思い浮かんだのは、2015年に閉鎖した鷲羽山ユースホステルです。しかし相部屋にしている様子などから合致しません。
そうなると下電ホテルが有力でしょう。
1992年の貞操観念を感じられるような気がしました。
翌14日はバスで鷲羽山展望台を訪れています。
頂上まで登山し、360度の展望を楽しんでいる様子が描かれています。
これが実際の鷲羽山頂上の風景です。
二人はここで瀬戸大橋、讃岐富士、讃岐山脈を見ました。
そして再びバスで倉敷駅を訪れると、前日は時間不足で行けなかった大原美術館とその分館を楽しみ、新渓園の東屋で事件についての会話をしました。
大原美術館はGoogleマップのストリートビュー機能で見学可能です。
事件としてはここまでで解決に至ります。
作品中では実際に事件がどのようにして起きたのかの描写も含まれますが、重大なネタバレになるのと、馬場夫婦編と今井刑事編で触れている内容ばかりなので割愛します。