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『領主のための切腹』
戸川安愛と幕末
倉敷市の帯江戸川家は1628年に戸川安利が帯江の地を分地されて帯江知行所を興して以降、江戸時代を通じて領主として土地を治めてきました。
しかし1862年に家督を継いだ戸川安愛は、明治維新の中で難しい舵取りを迫られます。
安愛は幕府側の立場を取り、主戦論者として戊辰戦争でも徳川慶喜を守って戦い抜きました。
しかし結果は幕府軍の敗退でした。
戸川安愛は官位を差し止められ、陣屋や帯江知行所は岡山藩に没収となりました。
領主のための切腹
江戸時代の領主の中には、年貢などで領民を苦しめていた人も少なくなかったそうです。
しかし帯江の領主は領民から慕われていた事が伝わるエピソードがあります。
領民たちは何とか戸川家が領主を続けられるようにと、処分の取り消しを岡山藩に働きかけたのです。
しかし当然ながら決定は覆りません。
嘆願書を届けた2人の武士は、手ぶらでは帰れないとその場で切腹して果てました。
時代の流れを読み誤ってしまい領主としての立場は失いましたが、領民からここまで慕われた戸川家は素晴らしいとは思いませんか?
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写真:切腹
写真提供:イラストAC