【感想】ボヘミア国王の醜聞-A Scandal in Bohemia /シャーロック・ホームズの冒険


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ホームズの短編第一作目となるのがこのボヘミア国王の醜聞です。

どんな作品?

記念すべき短編一作目にして、ホームズの初ロマンスとされる一作です。

ロマンスというほどではないものの、ホームズが口にする唯一の女性の存在という感じでシャーロッキアンの間でも知られる『アイリーン・アドラー』が登場するのが今作です。
ホームズが『あの婦人』として呼び続けた女性との対決が描かれています。

ところで本作ではワトソンが新婚生活満喫中です。

四つの署名で知り合った女性と結婚したワトソンは、ホームズの共同生活を解消し疎遠になっています。
四つの署名を半ばラブロマンスのように仕立てた書記は、新婚生活満喫中につき、幾つかの事件の記録を放棄していました。

あらすじ

久しぶりにホームズ宅を訪れたワトソン。
ちょうど依頼人が来るところだった為、同席することになった。

依頼人はなんと、ボヘミアの国王だった。
王は結婚が決まったものの、かつて交際をしていた女性、アイリーン・アドラーがいた。
そして二人は写真を撮影していたのだった。
アイリーン・アドラーはその写真を王女に送りつけると脅迫をしてきていた。

そして様々な方法で取り戻そうとしたものの上手くいかず、最後の望みとしてホームズに写真の奪還を依頼してきたのだった。

ワトソンの毒舌

この作品あたりから、ワトソンは妙に毒を吐くようになっていきます。
今回は久しぶりに訪れたワトソンが新婚生活や、女中について言い当てられた際に『数世紀前に生まれていたら、君は間違いなく火あぶりになっただろう』と、褒めているのだか嫌味なのだか、イマイチよく判らない賛辞を送っていました。




ネタバレ等は続き以降で。


ホームズとロマンス

事件自体はホームズが名声で勝ったという部分が大きいと思います。
ホームズが解決に乗り出してきたことから、アイリーン・アドラーの方が身を引いています。
しかしホームズにとっては、変装したアイリーンに挨拶をされていたりと、解決したとは言いがたい軟着陸というところでしょうか。

女性軽視のきらいがあるホームズにとって、この敗北とも言える展開は一種の教訓のような出来事だったようです。
報酬として、国王が差し出そうとしたエメラルドの指輪を誇示してアイリーン・アドラーの写真を要求しています。

この事を持って、知性的で自分を出し抜いた女性(アイリーン・アドラー)へ対する特別な感情をホームズのロマンスとする説が誕生しました。

この他にもホームズが事件解決の際に結婚の立会いをした際の金貨を時計の鎖につけておくなど、印象的な出来事の多い事件でした。