【感想】緋色の研究-A Study in Scarlet


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どんな作品?→緋色の研究

緋色の研究はシャーロック・ホームズシリーズの記念すべき第一弾です。

二人の出会いから共同生活の始まりが描かれています。
そして二人が揃い挑んだ最初の事件が、この緋色の研究です。
この時には既にグレグスンレストレイドの両警察関係者も登場するので、早くもホームズシリーズの主な登場人物が出揃います。

ホームズはまだ経験が少なく名前も知られていなかった為に、ワトソンも含めて周囲の人々から推理力に疑惑の目が向けられているのが特徴的です。
事件の発生年に関しては明確な記述がありませんが、ホームズは20代後半~30歳程度の、若い時期の事件です。
第一部で事件の解決、そして第二部では事件に至るまでの犯人の心理を描写するという二部構成の作品です。

四つの署名での大ブレイクまで、なかなか日の目を見る事の無かったと言われる本作。
後のホームズシリーズとの設定の差異も幾つか目立ち、ワトソンの傷の位置、その後登場することの無かったワトソンのペットの存在も記されています。
ホームズの性格を表現する際によく登場するワトソンによるホームズの人物評も本作で登場したものです

 

あらすじ

軍医として帯同していたアフガニスタンの戦争で負傷して帰国したワトソンは自堕落な生活を送っていた。
それを改善しようと、定住する為の住居を探していた所、共通の知り合いからルームシェアを提案された。
相手もワトソンと同じく、一人で暮らすには家賃がネックだと感じていたのである。

二人はそれぞれの条件も合い、共同生活を送ることになる。
一緒に暮らし始めて、不可思議な生活を送るホームズにワトソンは興味を抱く。
そして彼の推理に感服しているところに、一つの事件が舞い込んできた。

ホームズは事件の調査に乗り出すことを決めると、ワトソンに告げた。
「君も帽子を」
こうして長く続く、ホームズとワトソンのコンビが始まったのである。




ネタバレ、感想等は続き以降で。


感想

最初に二人が初めて出会ったのは病院の化学研究室です。
ホームズが事件調査に用いる為の『血色素以外では絶対に沈殿しない試剤』を発見した瞬間の事で、珍しく興奮気味なホームズの姿が描かれています。
その成果を証明する為に千枚通しで自分を刺して新鮮な血を使っています。
自分の興味のある事のためなら自らの健康を削ることさえいとわないというホームズらしさが既に発揮されているエピソードでしょう。

また、外から得られる状況だけでその人物の前歴等を当てて見せるというのはホームズシリーズでは定番のシーンの一つですが、緋色の研究の中で手紙を届けに来た男の前歴をホームズが答えた瞬間のワトソンの感想は 「このほらふきめ! (訳:延原 謙)でした。

キャラクター自体は第一作目から余り変わっていないと思います。
少しホームズの特異性が強調されていたり、ワトソンが後の作品で多少丸くなったかな…という程度の違いで、シリーズ第一作目としてはなかなか完成度の高い作品になっています。

二部は本来は歴史小説家であったコナン・ドイルらしい作品です。
ホームズというのは、探偵が活躍して事件を解決するというコマーシャルな部分で商業的な成功を目指し、第二部として自分の本来のフィールドでの作品を展開するというコンセプトだったのかもしれないですね。

このブログでは、今後たっぷりと時間をかけながらシャーロック・ホームズ全作品の読書感想文を書いていこうと思いますので、よろしくお願いします。
進捗具合はカテゴリー『シャーロック・ホームズ』でご確認下さい。