瀬戸大橋物語番外編:王子アルカディアリゾート
瀬戸内海国立公園の中でも有数の景勝地である王子が岳の一角では、フェンスに覆われた不可思議な廃墟を見る事が出来ます。
岡山県民、もしかすると玉野市民でさえ余り知らないその建物は、正確には『廃墟』ではありません。
瀬戸大橋に県民の期待が高まる中で着工された未完成の建物なのです。
バブル経済の波に乗って、当時の環境庁(現・環境省)が中心となって建設計画が出されたのが『王子アルカディアリゾートホテル』です。
国立・国定公園施設整備事業の第1号として、瀬戸内海国立公園を一望できる絶景スポットへ豪華絢爛なホテルを環境庁が建設し、それを玉野市の出資する第三セクターが買い取り、内装工事を施して完成するという計画でした。
しかし建設途中にいわゆるバブル経済の崩壊が起こります。
もはや内装工事だけでも30億円という壮大な計画に資金を出す銀行はありませんでした。
そのまま全てが止まってしまったのが、現在のアルカディアリゾートです。
風雨に晒されガラスもところどころ割れ、人が忍び込んだ形跡も残される『オープン前のホテル』。
幾度も利用計画が立てられ、やがて頓挫し、売りに出されても買い手が見つからず、未だに完成を待ち続けるホテルはただ佇むばかりです。
この当時に玉野市が第三セクターとして瀬戸内海界隈へ立ち上げた計画は三つ。
市内初の遊園地、そしてホテルが二つです。
遊園地の王子ファンシーランドは民間へ譲渡、瀬戸内国際マリンホテルは現在も第三セクターとして運営されているものの、一時は親会社の破綻により経営の危機に立たされ、そしてアルカディアリゾートは完成さえしませんでした。
瀬戸大橋の完成によって四国への玄関口としての役割が失われる玉野市が、瀬戸大橋による観光需要を見込んで立ち上げた計画ともいえるでしょうが、残念ながら瀬戸大橋にはそこまでの力がありませんでした。
残されるものはいつも寂しさばかりです。
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写真撮影:岡山の街角から
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