
『性病検査から始まった岡山県精神科医療センター』
岡山県精神科医療センターとは
岡山市北区鹿田本町には、岡山県精神科医療センターがあります。
岡山大学病院のすぐ近くにあるため、私は長らく「岡大病院の精神科」だと思っていましたが、実際には違っており、岡山県が設立した公立の精神科専門病院です。旧称は「岡山県立岡山病院」でした。
この病院の大きな特徴は、精神科の救急に対応していることや、県内で唯一の児童精神科入院病棟を備えていることです。
子どもから高齢者まで、年齢や性別を問わず、幅広い患者に対応できる体制が整えられています。
ま た、公立病院としての役割を果たし、民間の病院では対応が難しいケースにまで積極的に取り組んでいるのも特徴です。
実はこの病院、設立当初から一貫して、民間では対応しにくい分野で医療活動を行ってきたという歴史を持っています。
娼妓健康診断所から精神科専門病院へ
岡山県精神科医療センターの歴史は非常に古く、明治時代にまでさかのぼります。
その始まりは、明治33年(1900年)に制定された「娼妓取締規則」にあります。この法律により、娼妓(しょうぎ=公娼)に対して性病検査の実施が義務化されたため、岡山ではそれを担う施設として「娼妓健康診断所」が設置されました。 これが、同センターのルーツです。
その後、戦後の混乱期を経て性病患者は徐々に減少していきます。
やがて施設は「岡山県立岡山病院」と改称され、産科・婦人科・皮膚科・内科などを有する、地域住民向けの総合的な医療機関へと発展しました。
しかし時代が進むにつれ、社会の中で心の病や精神的な不調に悩む人が増加。その流れを受けて、病院は再び方向転換し、精神科を中心とした専門医療機関へと再編されました。
この転換が行われたのが昭和32年(1957年)で、これが現在の「岡山県精神科医療センター」の開設年とされています。
しかしその根底には常に、「公立病院だからこそ届けられる医療を提供する」という姿勢が貫かれています。
岡山県精神科医療センターは、これからも地域に寄り添い、時代に応じた医療活動を続けていくことでしょう。
写真:『昭和34年ごろの岡山病院』
