『竜も欲しがる東大寺の瓦』
瀬戸町、東大寺の瓦窯
1181年に奈良の東大寺は戦火に巻き込まれ、多くの堂宇を焼失しました。
その後、再建されることになった際に岡山市東区瀬戸町の万富で、再建の際に必要となる瓦を製造する事になりました。
万富で良質の土が取れる事に加え、吉井川が近い事から完成した瓦を水運で東大寺に届けやすいという土地柄が選ばれた理由です。
窯のすぐ東側に吉井川が流れており、そこから瀬戸内海に運び出し、大阪を経由して奈良の工事現場まで届けられたと伝えられています。
窯のあった場所はJR万富駅の北東に位置し、1927年に国の史跡に指定されています。窯跡は現在も調査が進められており、2004年には史跡の範囲が拡大されるなどしています。
竜も欲しがった上等な瓦!?
前述の通り、完成した瓦は吉井川から運び出されていきましたが、最初に完成した瓦は陸路で奈良に贈られたという言い伝えがあります。
それには竜にまつわる伝承が残されているのです。
地元の若い漁師が海から帰ろうとすると、ある美少女に話しかけられました。
なんとその少女は自らが竜女であると名乗りました。
竜の少女は万富で作られた瓦の品質が非常に高い事を聞きつけ、それを竜界に持っていきたいというのです。そして漁師に船に瓦が初積みされる日を教えるように頼みました。
しかし漁師は口を割らず、逆にその事を東大寺に報告しました。
初積みの船が狙われていると知ると、水路を利用した輸送を中止し、陸路にて天狗送り(沿道に立った人夫の手渡しによる輸送)で奈良に届ける事にしました。
これにより船を狙っていた竜女の船ごと瓦を奪う計画は不発に終わり、無事に万富産の瓦が東大寺へと届けられたのでした。
その後…
ここまでなら竜女をしてやったりのハッピーエンドですが、この話には悲しい続きがあります。
竜女は自らの計画が失敗に終わった理由にすぐに思い当たりました。
あの時に船の日程を訪ねた漁師が、口を割らなかった上に更に彼女の計画を密告してしまったのであろう、と。
彼女は怒り、その身を雷神に変化させると、漁師とその家族を殺害してしまったそうです。
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画像:柳川筋

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