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地名の由来:湯迫
岡山市中区「湯迫」の由来は“湯が迫る谷”の温泉伝説
地名の由来
岡山市中区にある「湯迫(ゆば)」は、「湯迫温泉」があることで知られています。この「湯迫」という地名は、文字通り「湯(温泉)」と、谷や山が迫る地形を意味する「迫」に由来しており、その背景には興味深い伝説が残されています。
※注意:現在の「湯迫温泉」は、この伝説の場所とは別に、近代になって開発された温泉施設です。
伝説の舞台は「浄土寺」の境内
地名の直接のルーツとなったのは、地区内にある天台宗の寺院「浄土寺(じょうどじ)」です。
かつて、このお寺の境内にある杉林の中にこんこんと湧き出る泉があり、それが温泉だったと伝えられています。地域の人々にとって、この湯は大切な癒やしの場だったのかもしれません。
しかし、この温泉は現在湧出しておらず、普通の泉(井戸)になっています。なぜ、あれほど湧いていたお湯が枯れてしまったのでしょうか。そこには、少し不思議な物語が関係しています。
なぜ温泉は枯れた?牛にまつわる不思議な言い伝え
牛が温泉を枯らした?
浄土寺の温泉には、「牛が泉に落ちて死んでしまい、それ以来お湯が枯れてしまった」という言い伝えが残されています。
突然温泉が枯渇するという科学では説明しにくい出来事を、当時の人々は牛という身近な動物にまつわる出来事と結びつけ、物語として後世に伝えたのでしょう。
温泉の記憶をとどめる地名と伝説
このように、かつて温泉があったものの、何らかの理由で枯渇し、その記憶だけが地名や伝説として残るケースは、日本全国で意外と多く見られます。
岡山県内にも、以下のような例があります。
- 真庭市「蒜山湯船(ひるぜんゆぶね)」:こちらも温泉地として知られる地名です。
- 里庄町「湯の池(ゆのいけ)」:池の名前として残っています。
特に里庄町の「湯の池」には、「鬼が傷を癒やすために使っていた温泉を、英雄・吉備津彦命(きびつひこのみこと)が封じてしまった」という、さらに壮大な伝説が残っています。
人々の暮らしに豊かさをもたらす温泉が失われるという大きな出来事は、人知を超えた神秘的な物語を生み出すきっかけとなったのかもしれません。
まとめ
岡山市中区「湯迫」の地名は、浄土寺の境内にあったとされる温泉に由来します。その温泉が「牛が落ちたことで枯れた」という伝説は、自然の不思議に対する人々の解釈が物語として息づいている証拠と言えるでしょう。
今はもう湯けむりの上がらない泉を眺めながら、この地に秘められた遠い昔の物語に思いを馳せてみるのも一興です。




