直島経由航路に困惑の声 宇高航路代替提示も「不便」(https://www.sanyonews.jp/article/983272?rct=area_content)
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“直島経由航路に困惑の声 宇高航路代替提示も「不便」”という記事が出ていました。
記事の内容を、個人的な感想を交えつつザっとご紹介します。
2019年、四国フェリーが運休した事で宇野-高松間を結ぶ直通のフェリーが無くなりました。
この時に国土交通省四国運輸局は宇野~直島~高松という直島経由のルートをサイト内で提示しました。
直島のフェリーと代替ルートという言葉のズレ
今、この事が直島の航路を運営する四国汽船を悩ませています。
そもそも宇野~直島、直島~高松というのは直島で生活をする人々の為の生活航路です。
直島は立地上、岡山県玉野市の方が近いので島内では充分に揃わない買い物や、設備の整った病院などの為に玉野市へ渡る事が多いのです。
これが宇野~直島を結ぶフェリーが本来目的としている航路です。
そして岡山が近いと言っても、香川県の島ですから県庁などの用事で高松市へ渡る必要もあります。
玉野市と比べると高松市の方がお店なども充実しているので、玉野でも購入できない物は高松へ…という事もあるでしょう。
これが直島~高松を結ぶフェリーが本来目的としている航路です。
そこに唐突に宇高航路の代替えという需要が覆いかぶさってきたのです。
これは四国汽船自体も想定していなかった事です。
「乗り継ぎ不便」という矛盾
そもそも宇野と高松を結ぶために運行していなかった為に、利用者には様々なデメリットがあります。
第一には宇野から直島に行き、一旦降りて今度は高松行のチケットを購入して乗り継ぐ必要があります。
その為、所要時間も増えますし、料金も多少増えます。
乗り継ぎに失敗した場合はかなりの時間を要する事にもなります。
言うまでもなく「不便」です。
しかしそれを四国汽船に向けるのは、前述の通りややお門違いな部分も否めません。
同社は宇高航路の代替に手を挙げた訳ではなく、たまたま同社の航路を使えば橋を使わずに宇野から高松まで行く事が出来ただけなのです。
しかしなんと同社あてに直通で結ばない事へ対する問い合わせも多くあったそうです。
今後、宇野で高松までの乗り換え込みのチケットを販売する事もあるかもしれませんが、現時点ではありません。
担いきれない瀬戸大橋の代替
そして最大の問題は悪天候の際の瀬戸大橋との代替です。
瀬戸大橋は悪天候に弱く、強風などの際には早々に通行が停止されます。
悪天候の場合は船の方が運行できる時間は長いのです。
その時に代替になっていたのが宇野-高松の航路ですが、その大きな需要が今後は直島経由に向けられる事が考えられます。
直島へ渡ったことがある方はご存知だと思いますが、直島へのフェリーはそんなに巨大なものではありません。
そして直島の港自体もそれほど広い物ではありません。
そこに橋を利用するはずだった人が流れ込むのはキャパシティオーバーです。
限られた需要の為に同社が大型の船を用意したり、港を拡張するのは不可能でしょう。
それが可能ならそもそも四国フェリーが撤退していない筈です。
なのでせっかく港まで行っても、それでも渡れない可能性は充分に考えられます。
そして最悪なケースとしては、その需要の為に島に住む方が必要な移動が出来なくなってしまう場合すら考えられます。
今さら?議論の必要性とは
山陽新聞の記事では最後に今後の代替航路の在り方について、行政・事業者・利用者で議論すべきだと締めています。
個人的な感想としては、いまさら議論?という感じも否めません。
四国フェリーが運航継続の条件として提示した補助金の増額を蹴って、宇高航路が無くなる事を容認した時点で、そんな議論は終わっていた筈です。
島民の為の生活航路を逃げ道にした国交省しかり、自治体しかりの問題でしょう。
利用者ではなく行政と事業者で話し合う事だと思います。
もちろん橋が利用できない交通手段で困っている方も多くいます。
高速道路の走行が不可能な小排気量のバイクなどでの移動をしている方には、直島経由は海を渡る限られた方法です。
全ての人にとってより良い解決策が見つかる事を願っています。
直島在住の者です。
山陽新聞の記事は紙面で読みましたが、コラムでご指摘の通り「今さら何言ってるの?」という印象です。
フェリーの積載量や直島の宮浦港のスペースについては触れられている通りですが、地元住民から見ても四国フェリーの代替を四国汽船に求めることは難しいと思います。
現在、宇野~直島~高松航路に就航しているフェリーは2隻ですが、どちらも1000トン級で、瀬戸内海で運航しているフェリーとしては最大クラスです。船をより大型にすると、各港の岸壁や接岸設備の改修が必要になると思われます。
また、フェリーの建造費(今の船が1隻13億と聞いたことがあります)や接岸設備の改修費が宇野~高松直行ニーズからの増収分で賄えるわけがありません。それなら四国フェリーが赤字で宇高航路から撤退するわけがありません。
四国汽船が宇野~高松の通し切符を発売すればいい、という方もおられます。
旅客のみの通し乗船ならば、船内検札をやるなど対応方法はあるかもしれませんが(それでも余計なオペレーションが増えるわけですが)、車両の通し乗船は困難です。
宇野→直島→高松の場合で考えると、直島で下船する車と、そのまま高松へ行きたい車を混載することになるわけですが、乗船させるときに直島行と高松行の車を別のレーンに載せることは不可能(積載スペースとバランスの点、到着順に積載していく点から)であり、どのみち全車両を直島で下船させざるを得ません。
そして、直島の宮浦港はスペースに限りがあり、下船した車両はそのまま島内の道路へ走行していく設計になっています。待機レーンには直島から乗船する車両が並んで待っているわけですし、大型車両だと転回して待機列に並び直すのにはかなり困難が伴います。
地元利用者としては、ただでさえ観光客・観光バスの増加による混雑で積み残しが発生したりして困っているのに、それに拍車をかける宇野~高松の車両は正直なところ乗ってほしくありません。港が混乱したり、ダイヤが乱れたりと、宇野~高松の利用者以外は誰も幸せになりませんから。
鉄道の廃線などと同様に、廃止される段になってから「困る」「不便になる」などと言われても、そもそも利用者が少ない=不採算だから廃止されるわけで……。
その代替を他の民間事業者(+地元利用者)に一方的に要求されるのはお門違いだと思います。
今回の宇高航路終了への流れはずっと注視していましたが、特に玉野市(市長?市役所?)の無為無策が目立つように思います。
航路維持への取り組みは四国フェリーへの年間数百万程度の補助金だけ、乗り継ぎポイントとなる宇野港周辺の整備もしない、廃止(厳密には休止ですが)が発表された時の市長コメントは岡山県知事のコメントのコピペ……と、評価できる点が何ひとつありません。
ブログ主さまも玉野のご出身ならよくご存じだと思いますが、市役所は地域振興に関して昔からロクなことをしないというか、本当に前科しかないですから……。
いずれにせよ、今回の件は複合的な問題ではありますが、根本は「税金で整備されて安く利用できる瀬戸大橋」と「民間が自力でやらないといけない宇高航路」という構造問題だと思います。
コメントありがとうございます。
今回の記事の件は、机上で見れば出来るという事実だけで丸投げした国交省や自治体の問題だと思います。
港の規模、瀬戸大橋の代替航路になる可能性、瀬戸芸などで人が増える時期があること、様々なポイントが見落とされていたような気がしてなりません。
とりあえず船で高松(宇野)まで行けるから問題ないでしょ?と押し切った感じが否めません。
自分たちでフェリーを追い込んで、そのツケ払いを更に別のフェリーに…というのは、虫のいい話しすぎます。
このブログ記事を書こうと思ったのも、それは違うだろ?と感じた為でした。
玉野市の現在の市長については、残念ながら全てにおいて無策です。
宇野港については直島のアートブームに乗っかって市にお金を落としてもらう事しか頭にないのではないかと。
財政がかなり危険な状態で、情けないことに援助しようにも出せる物がないという事情もあります。
実際に国交省や自治体が議論をするのかどうかは判りませんが、実現するのであればもう少し実情を見た上で実りのある話になれば良いなと思います。
コメントありがとうございます。
おっしゃる通り、官(市や国交省)の無策で、民(フェリー会社)を追い込んでしまったように思われてなりません。
個人的には、瀬戸中央自動車道の料金値下げがそもそもの元凶だと思っています。
全国の地方で共通の事象ですが、税金で建設される高速道路や高規格道路が既存の鉄道を駆逐していく、というパターンの海上版ではないでしょうか。
値下げになる前の段階では、「料金が高くても速度優先」なら瀬戸大橋、「時間はかかっても安い&ドライバーが休憩できる」が宇高航路、と住み分けができていたのが、瀬戸大橋の値下げでおかしくなってしまったと思います。
かつての宇高航路の収益を支えていた運送業界のコストと時間に対する制約が強くなっている、という二次的な要因もあるとは思いますが、やはり道路政策に振り回されたことが否めません。
玉野市に関しては、財政事情が末期的で、公共施設の建て替えすらままならない(市民病院、市民会館、市役所など)ほど資金がないのは承知しています。
今の市長は4期も務めて、市民病院の建て替えすら道筋を付けられない(市議時代から考えれば、四半世紀も市政に携わっているにも関わらず)体たらくですし。
宇野港については、直島の集客力に乗っかる(歯に衣着せずに言えば、寄生する)
ことしか考えていないと思います。アート風のオブジェとか、関係者利権になっている移住推進とか、金額は小さくともムダ金だと思います。
県内で人口規模が似通っている総社市、笠岡市などに比べ、一応(?)街の玄関口であるはずの宇野駅・宇野港の「何もない」感は段違いです。
昔から大手チェーンが進出してこない玉野市ですが、駅前に車を停めてゆっくり食事や休憩できる施設がない、というのはどう考えてもおかしいです。
日頃、買い物や通院などで玉野へ出ることが多い直島住民としては、宇野港から近いエリアがもっと発展してほしいと思いますが、期待できそうにありません。
三井造船も危機的な状況ですし、悲しいことですが玉野市は衰退する地方都市のフロントランナーなのではと感じてしまいます。
宇高航路問題については、地方ローカル鉄道のような上下分離あるいは公設民営方式で、宇野~高松間を運航する新しいフェリー会社を作る以外に、抜本的な対応策はないと思います。
国交省が離島航路支援の枠組みを元に、例えば「基幹代替航路維持支援制度」のようなものを作って資金を下ろしてくれれば出来るかもしれませんが、そういう働きかけをすべき地元自治体がお察しの通りなので……。
本来は、宇高国道フェリーと津国汽船が撤退したくらいのタイミングで、先んじて対策を打たなければならなかったのだと思います。