【シリーズ:一億円の行方①】ふるさと創生事業、岡山県内各自治体の知恵と迷走 岡山市、玉野市ほか編

舞い降りた一億円、その光と影|ふるさと創生事業の行方
1988年から1989年にかけて、日本の全自治体に一律で一億円を配布する「ふるさと創生事業」という取り組みが実施された事があります。
正式名称は「自ら考え自ら行う地域づくり事業」というもので、地方交付税を受け取っている自治体に対して、一律で用途を決めずに配布しました。その名の通り、用途は自治体自身が決めるのです。
後には箱モノやモニュメントなど、無駄遣いに終わったという評価も少なくありませんでした。
では岡山県の各自治体はどのような使い方をしたのか?
資料から、数回に分けて紹介していこうと思います。
岡山市
- ふれあい観光事業:観光事業への補助金交付
- 国際交流事業:留学生や研修生など、岡山に滞在する外国人との友好親善、相互交流を促進する事業を展開する。
まずは県都、岡山市。
用途としては補助金など、形に残らない物への投資でした。
この使い道は意外と多かったのですが、その理由としてはいい使い道が思いつかなかったからという事情もあるようです。
御津町(現・岡山市北区)
- 新しい町章の制定
- 総合運動施設の建設(※調査と設計)
- 人材育成のための補助制度の新設
- 温泉源泉の探索
続いては現在は岡山市と合併した御津町の使い道です。
まずは町章の新調です。
1990年に2代目の町章に切り替わりました。
このマンホールの中心部にある物がそれです。
そして運動施設の建設…ですが、今回の制度から出したのは調査と設計に留まります。
これは御津スポーツパークでしょうか。
そして補助金、更に温泉源泉の探索と続きます。
なんとなく岡山市に引き続き、用途に迷ったうえでの使い道のようにも見えます。
一億円は個人では非常に大きな金額ですが、自治体単位だと何をするにも中途半端というか、微妙な金額なのかもしれません。
建部町(現・岡山市北区)
- 独居老人宅の緊急通報システム整備:詳細は後述
- 高齢者福祉施設「福寿園」の新築
- 国際温泉会館の整備・運営
- 町史編纂―など12事業
ほぼ箱モノへの運用です。
国際温泉会館はたけべ八幡温泉の前身となる施設だったようです。
この中で興味深いのは独居老人宅の緊急通報システムです。ペンダント型の発信機でもしもの時の緊急連絡が可能になるというアイテムです。
インターネットも普及していなかった時代、どのようなシステムだったのか分かりませんが、現在のスマホやスマートデバイスに通じる先進的な取り組みです。建部町も後に岡山市と合併しますが、通信機器などは小さい町だからこそ実現可能だった方法として評価できます。
加茂川町(現・吉備中央町)
- 若手育成事業:小学生6年生を対象とした富士山登山隊など
- 農業振興:ミョウガのハウス栽培など、特産品の研究・開発
- 地域活性化事業
こちらは補助金などの分類でしょうか。
恐らく用途が思いつかなかなかったパターンなのでしょう、漠然とした感じがします。
でも小学六年生を対象とした富士山登山などは面白いですね。友人同士や、引率の大人らとの絆も強くなりそうです。
玉野市
- 芸術・文化振興事業:アート活動をする団体への助成、イベント開催
- 人材育成事業:国内外で派遣研修を行う際の助成金
こちらも補助金のパターンです。
使い道が思い浮かばなかったのでしょう。
灘崎町(現・岡山市南区)
- 人材育成事業・ふるさと創生基金の作成
こちらも助成金での運用ですが、基金を作ることで、運用益から助成を行うという形を取っています。
だからどうしたというくらいの違いしかありませんが。
備前市
- 笹尾山植物公園建設事業:笹尾山に植物公園を建設し、市民の触れ合いや学習の場とする。
これについて調べてみても、それらしいものがなかったのですが、たまたま開いてみたwikipediaの用途欄には1990年時点で大学誘致の為の基金とする事が検討されていたという事が記載されていました。
私が持っている資料も1990年発行のものですが、結局、使い道が定まらなかったのでしょうか。
最終的にどうなったのか、1991年以降の資料が見つかるのを待つしかないようです。
日生町(現・備前市)
- ロマンチック街づくり事業:駅周辺の街並みを観光客向けに再開発する
- 高齢者生きがい対策
- 国際交流事業
- ふれあい交流基金の設置
駅周辺の再開発以外に関しては助成金などのグループと言えそうです。
ただ箱モノと比べれば、駅周辺の街並みはいったん整備すればお金もかかりませんし、長く玄関口として機能します。
個人的には今までの自治体の中では、まだ真面な用途かな?と思いました。

実際、日生駅前の辺りは緑化されていたり、街並みとしては整っていて、初めて訪問した時も印象的だったのを覚えています。
吉永町(現・備前市)
- 奨学金貸付事業
- 海外派遣研修事業
- 青少年健全育成事業
この三つの事業の運用に使用したそうです。
奨学金は個人的にはアリかな?と思います。
他の事業を見ても、他の市町と同じ補助金、助成金の類で使い道が思いつかなかったのであろう事は明白です。
それなら分かるような、分からないような事業や団体にお金を出すよりは、学生の支援をした方が分かりやすくていいと感じました。
和気町
- ふるさと創生基金の設置
主な用途としては基金の設置ですが、その基金から人材育成事業、ふるさとおこし事業とあります。
こちらも補助金のパターンです。
佐伯町(現・和気町)
- 若者定住促進事業:結婚祝い金制度、結婚媒酌人謝礼精度、引っ越し補助金、通勤補助金制度など
佐伯町は若者の定住に使用しています。
結婚祝い金、引っ越し補助金など、現在でも自治体が導入を進めているような制度も見られます。
それと媒酌人にも謝礼が出るのは面白いというか、時代を感じますね。最近では仲人や媒酌人を設定しない結婚式の方が多いのではないかとも思います。
後の人口推移言えば余り効果があったとは思えませんが、個人的にはいい取り組みだと感じました。
という事で、ふるさと創生事業一億円の行方、第一回目はここまでにしようと思います。
平成の大合併で市町村が減る前なので、大小で多くの自治体が存在します。全ての市町村のゆくえを追いかけていくつもりなので…、全5~6回くらいの予定です。
ここまでを見てきた感想としては、様々な媒体で触れられているように急に降ってわいた一億円の用途に困ったんだろうなと感じました。
補助金、助成金への仕様はその最たる部分かと思います。今回紹介した自治体だけでも、それが凄く伝わります。
他方で建部のような興味深い取り組みも見られます。この後に紹介する自治体からも、どのようなものが出てくるか楽しみです。
この記事を読んだ方はこんな記事も読んでいます
岡山生まれ、在住歴=人生。興味がある場所は歩いて見に行く「まち歩き」実践者。 郷土史だけでなく、地域グルメの歴史や廃線跡などの隠れた観光スポットを特に深掘りして発信。現在から過去まで網羅する岡山の情報サイト。 サイト開始:2002年~。25年以上の運営実績。













