【高梁】廃墟となった温泉宿「福地温泉」|蛍と冷鉱泉が眠る、山中の迷宮

森に呑み込まれる「福地温泉」|高梁で見つけた静かなる廃墟
先日、高梁市落合町福地の辺りを散策してきました。
福地と書いて「しろち」と読む、岡山県の中でも難易度の高い難読地名として知られるエリアです。
地区内を流れる福地川で変わった形の石を見つけて、意気揚々と調べて、ついでに暑かったので少し川の水と親しんだりと、凡そいい年をした大人のする事ではない楽しい時間を過ごしていました。
そして川から這い上がっていくと…。

なんと、そこにお風呂がありました。
驚きの展開です。しかし見るからにお風呂です。
実は川からダイレクトに県道に戻ってやろうと、木々が茂っている場所に上がったのですが、その木々の向こう側に建物があったのです。
私はそれに気づかず建物の横側に上がり、ドアが壊れて空きっぱなしになっているお風呂を見つけてしまったというわけです。
もちろんこの時点では建物が廃墟なのかどうかも分からなかったので、慌ててその場を離れました。
洗面器などの状況から明らかに使用されてはいませんが、建物が半壊の状態でも人が住んでいる…なんてことは、街歩きをしているとざらにある事です。

しかしここに関してはその心配はないようです。
ご覧の通りに完全に廃墟化しており、建物が使用されていたり、人が住んでいるような痕跡は見られません。
鉄筋の建物なのでわりとしっかりしていますが、かなり前から放置されているように感じます。

私が上がってきた河原側だけではなく、既に建物のある敷地全体が食部に覆われ始めています。
その隙間から見える建物はコの字のような形をしています。建物の雰囲気からしても高度経済成長期前後くらいではないでしょうか。
建物の周囲を散策していて、ようやく正体が分かりました。

ボロボロになった看板がありました。
「福地温泉」とあります。
その下の建物の名前がちょっと読みづらいのですが、久山閣…でしょうか。
一文字目は余り自信がありません。
温泉旅館だったのか、もしくは宴会場だったのか。そういった施設だったのは間違いありません。
福地は蛍の名所としても知られます。先ほどのお風呂も、恐らく窓を開けて蛍を楽しみながら温泉を楽しむ…、そんなコンセプトで作られていたのでしょう。

開けっ放しになっている窓から山吹という名前の部屋が見えます。
ここから分かるだけでもレトロな雰囲気がして素敵ですね。
ネットで検索してみて、それらしい建物は全くヒットしませんでした。2000年代前半くらいのネット普及期に存在していれば、何かしらのサイトに痕跡が残っている事が多いのですが、それ以前に閉業してしまっているのでしょう。
一応、福地温泉自体は岡山県の源泉の一覧に昭和48年に分析が終了した冷鉱泉として登録があります。
そして同一覧の利用状況は空欄になっており、福地温泉を活用している施設は無いようです。
最近ならサウナの水風呂に冷鉱泉を使ったりすることもあるようです。もし、この施設が現役だったらなら、蛍が見えるサウナというようなコピーで、ちょっとした名所になっていたかもしれませんね。
街歩きの際にこうした廃墟を見つける度、「かつての賑わい」と「現在の静寂」の対比に胸を打たれます。福地温泉の看板を後にしながら、私はかつてこの地を訪れた人々の楽しげな声や、湯気に煙る蛍の光を想像しました。
またどこかの街角で、こうして歴史の断片に触れ、忘れられかけた風景をネット上に届けられるように、歩き出していくのです。
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岡山生まれ、在住歴=人生。興味がある場所は歩いて見に行く「まち歩き」実践者。 郷土史だけでなく、地域グルメの歴史や廃線跡などの隠れた観光スポットを特に深掘りして発信。現在から過去まで網羅する岡山の情報サイト。 サイト開始:2002年~。25年以上の運営実績。












