2021年10月3日に行われる岡山市長選。
現職の市長で3期目を目指す大森雅夫さんの選挙のパンフレットを深堀りしてみました。
さらなる高みへ 飛躍おかやま
キャッチコピーの「さらなる高みへ」という文言からも分かる通り、基本的には2期8年の実績を押し出した内容です。
その上で掲げられている公約は以下の2つ。
・「新型コロナウィルス感染症」への取り組みを強力に推進
・市民誰もが”住み続けることに誇りの持てる”まちを実現
やや無難な感じです。
現職なので新たな方針を掲げるよりも、現状の評価を訴えて引き続き取り組む方向なのでしょう。
新型コロナウィルスへの取り組みついては誰がやっても大差ない結果になるとは思いますが、積極的な発信は少なめだった印象です。
ネット上で見る限りクラスター感染の詳細や、せめて区別での人数の公表を…といった要望があるようです。
この辺りに対する答えが出れば評価が上がりそうですが…。
続いてはチラシの半分を割かれている、8年の実績について触れていきましょう。
8年の実績
魅力と活力のあるまちづくり
・新市民会館の建築
・県庁通りの一車線化
・岡山城の魅力アップ(リニューアル)
・岡山芸術交流の開催
・おかやまマラソン
ここまでを見ると色々とやってますね。
個人的には幻想庭園に岡山城を積極的に絡めた事と、おかやまマラソンは高評価です。
どちらも確実に人を岡山市に呼び込むことに成功しています。
新市民会館については少し微妙な内容に感じました。
中心市街地から離さないという条件があったので仕方ないと思いますが、私が思っていたより小さいなと。
岡山県で音楽のコンサートとなると大抵が倉敷市民会館で、岡山市民会館はやや小規模な演歌のコンサートなどが中心です。
県内で食い合っても仕方ないのですが、せっかく新設するのであれば倉敷の需要を引っ張ってこれるくらいの規模の施設を作ればよかったのにと思います。
県庁通りの一車線化については、どうでしょう。
ネットを見ていても評価は割れている印象で、渋滞への不満も聞こえてきます。
岡山は車社会なので、車の動きを阻害する施策は評価が難しいのかもしれません。
岡山芸術交流は3年に一度行われるイベントで、岡山城・後楽園周辺で芸術鑑賞が出来るようにするものです。
イメージ的には瀬戸芸の岡山市版といったところでしょうか。
経済効果も大きそうです。
地域経済の活性化
・企業誘致78件、投資額約740億円
・スタートアップ支援拠点「ももスタ」開設
・ESDに関する世界会議 開催
・G20岡山保険大臣会合 開催
・コンベンション参加者数 約16万2千人(就任から約3万8千人増)
・桃太郎伝説の日本遺産認定
・造山古墳ビジターセンター開設
・市内延べ観光者数(令和元年)約758万人(就任から約194万人増)
企業誘致については素晴らしいと思います。内訳は見ていませんが働きかけをするような規模の会社が78社も誘致できているなら、投資額も順次回収できるでしょう。
ももスタは完成が令和元年で、翌年にはコロナが流行りだして…で、難しい時期に出来てしまった印象です。
これについては現時点で評価をするのはフェアではないように思います。
会議、会合の開催については、正直どこまで活性化の効果があったのかは分かりません。
人は集まったのでしょうが、お金を落としてくれる人とは違うようにも感じます。
そういうピンポイントのデータは見当たらなかったので、個人的な感想としておきます。
観光者数の増加については、幻想庭園を増やして、更に岡山城との連携。
稼げるところを徹底した印象です。後楽園の入園者数でその効果は充分に証明されています。
しかし市街地以外の観光はどうなの?や、おかやま桃太郎まつりの花火大会の開催場所についての問題も残っています。
新型コロナの流行中は仕方ないにしても、早い段階での花火大会の再開には期待したいです。
造山古墳ビジターセンターは良い施策だと思います。
古墳探訪はわりと緩やかなトレッキングで終わってしまいがちなので、そこにきちんと学びの場があるのは素晴らしいことです。
造山古墳は宮内庁管理の古墳を除くと日本で最大規模の古墳です。より活用していきましょう。
交通ネットワークの充実
・岡山駅前広場のリニューアル、路面電車の乗り入れ
・バス、路面電車の高齢者、障害者割引実施へ
・生活交流(コミュニティバス、乗り合いタクシー)の市内8地区への導入
・美作岡山道路の瀬戸熊山IC間の供用開始
交通については市主導で行える事は余り多くないと思います。
なので路面電車の岡山駅前乗り入れ以外については地味だなと思いました。
路面電車はどれくらいの効果が出るのかを見極めないと、現時点で評価すべきではないと思います。
交通量の多い道路をショートカット出来るとはいえ、直線距離では百メートル程度の移動。
実際の人の動きが変わるのかどうか、答えはこれからでしょう。
子育て環境の充実
・待機児童問題→ほぼ解消
・放課後児童クラブの見直し
待機児童問題については成績が悪いところから、一気に解消したのは評価すべきポイントですね。
ただし岡山市内の子育て中の人からは、施設の内容については若干の不満点も聞こえてきます。
放課後児童クラブの見直しについては、情報が上手く拾えませんでした。
それと岡山市の取り組みによるものではないかもしれませんが、評判の良い施設が多いのもポイントは高いと思います。
今の親世代は幼児教育に力を入れているので、私の身近でも評判の良い保育園へ通う為に岡山市への居住を決めた人がいます。
教育環境の充実
・第一期岡山市教育大綱(学力の税国平均レベル達成)
・第二期岡山市教育大綱
学力については岡山県の方でもかなり取り組んでいるので、岡山市だけの実績とは言えないかもしれません。
しかし数字上ではっきりと結果が残されているのは大したものです。
健康福祉の充実
・健康ポイント事業、障害活躍就労支援事業の実施
・PHO(ポジティブヘルス岡山)策定(G20岡山保険大臣会合関連)
・健康寿命の向上
ちょっと地味といえば地味ですが、堅実に行っている印象です。
健康寿命については岡山市だけでなく、日本全体の傾向なので評価対象としては微妙です。
防災・減災対策(西日本豪雨災害を教訓として)
・自主防災組織率 69.3%→94.1%
・浸水重点地区の追加、ポンプ事業の加速化
西日本豪雨の対応については、大きな被害があった倉敷、そして岡山ともに総社市長に注目を奪われた印象があります。
行動力、発信力ともに優れた総社にスポットが当てられてしまった印象です。
しかし両市とも事後の対応は堅実かつ着実に行っています。
この点はもう少し評価されても良いかと思います。
若者や女性が活躍できる社会づくり
・市役所の女性管理職 平成26年6.5%→令和3年15%
・就職氷河期世代の採用(令和2年8名)
女性管理職については公務員の最新データが見当たらなかったのですが、民間では2021年で8.9%です。
公務員と民間で単純に比較は出来ませんが、悪くない数字のようにも見えます。
就職氷河期世代は1993年から2005年卒業の世代。
…あれ?若者が活躍できるの部分が欠けてませんか(笑)
もう一つ言えば今の時点で就職活動をしている世代も、やはり氷河期だと思います。
その辺りの救済も触れてほしかったです。
持続的発展を支える都市運営
・健全で持続可能な財政運営(経常収支比率・政令指定都市で1位)
・地域センター、公民館、消防署などの整備
・岡山連携中核都市圏の形成
・SDGs未来都市に選定
この辺りは堅実にこなしていると思います。
もちろん大森さんの実績だけではなく、歴代の岡山市長の積み重ねによる部分も大いに含まれます。
欄外で人口増加についても書いていますが、これも岡山市は人口増の傾向が続くのは政令指定都市に指定される時点で分かっていたことなので、正直数字を見る限り実績とは違うのかな…?とも思います。
感想
先日、菅総理大臣が次の総裁選への出馬をしない事を表明しました。
その時になってSNSや報道で急にこれまで堅実にこなしていた政策への評価が高まるという現象がありました。
大森さんもそういうタイプではないでしょうか。
一つ一つの実績を見ると、非常に堅実にこなしているのが分かります。
内容的に華やかさに欠ける点や、発信の不器用さを感じます。
もう一つ加えると中心市街地の開発には県知事も熱心なので、その陰に隠れてしまった印象は否めません。
8年間の実績は評価出来る部分が多々あるように感じます。
新型コロナウィルスへの対応については、各地の首長が評判を落としています。
しかし未知のウィルスに対して政治家が上手く立ち回るというのは難しいことですし、それは恐らく人を変えても大きな変化は期待できないでしょう。
コロナ対策からの不満で別の候補への投票を考えている方も少なからずおられると思いますが、大森市長のこれまでの実績も考えた上で決めるのが良いのではないかと思います。