瀬戸大橋物語5:国立公園の新たな景観作り

瀬戸大橋

国立公園の新たな景観作り

  国立公園に架かる橋
 瀬戸大橋架橋にまつわる問題は建造の技術面だけではありませんでした。

 瀬戸内海は日本の国立公園の制度創設時から国立公園指定地区に指定されています。
 穏やかな海に浮かぶ多島風景の美しさ…そんな風景が評価されて制定された瀬戸内海国立公園の中心部に巨大な橋が架かるという計画なのですから、財団法人 国立公園協会からも景観の破壊をけん制するような報告書が出されるなど、『ただ橋が通ればいい』というわけにはいかない状況に陥っていました。
 瀬戸大橋は実用性を備えるのみならず景観へ溶け込む美しい橋であり、瀬戸大橋が存在する新しい景観を生み出す橋でなければならなかったのです―。
 
  自然との調和を目指して
 瀬戸大橋を瀬戸内海国立公園へ調和させるための最初の難関に、当時の航空法で定められていた色の制限を取り払う必要がありました。
 当時の航空法は60m以上の高さのある塔のような建物には紅白の塗装をすることを定めており、これは瀬戸大橋の主塔も例外ではありませんでした。

 しかし瀬戸内海の景観の中に紅白の橋を建てるわけにも行かず、景観を守ること、そして航空障害灯の方が視認性が良いというデータに基づいて、まずこの規制を外していきます。
 その上で自然に最も溶け込みやすい色を探し、現在のライトグレーの色が決定しました。

 この色を提案したのは風景画家の東山魁夷さんです。
 現在では完全に周囲の風景と調和した瀬戸大橋は瀬戸内海国立公園の目玉の一つでもあり、多くの人々の目を楽しませていますが、この色を決定する際に意見を求められた東山さんは、風景画家である自分が風景を破壊しかねないプロジェクトへアドバイスをすることを嫌い、自分の名前が表に出ることさえ拒んだといわれています。

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写真提供:岡山県


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