TOPコラムコラム・岡山の事件簿>79.興除村一家三人殺人事件

殺人依頼

『興除村一家三人殺人事件』

事件の動機


 1914年9月に岡山県の興除村(現在の岡山市南区興除地域)で一家三人が殺害される事件が発生しました。
 事件の主犯として逮捕されたのは、この家の未亡人の女性です。彼女は養子の一家が家督相続する事を不満に感じていました。

 家督相続は日本の法律で1947年まで施行されていた遺産相続のルールです。戸主が家のすべての財産を相続するものです。戸主になるのは基本的に長男ですが、この事件では相続するのは養子で、未亡人がいる事から長男が相続前に亡くなっていたのでしょう。

事件


 自分が得られないばかりか、養子がそれを持っていく。
 その事が許せなかった未亡人は、なんと養子一家の殺害計画を立てました。

 未亡人には当時の表現で「情夫」とされた恋人関係の男性がいました。
 男性に対して借金をしていた事情からすると、現在の表現ではヒモと呼ばれるような間柄だったのかもしれません。
 この男性に借金の230円をチャラにし、更に400円の成功報酬を約束して殺害を依頼しました。そして自分は外泊する事でアリバイ作りをしていました。
 更に周囲には自分が虐待を受けているという噂を流すなど、準備を整えていました。しかしふたを開ければ早々に逮捕され、主犯として死刑判決を受けました。
 事件発生から1年も経たない1915年8月下旬に死刑が執行されました。
 実際に犯行に及んだ男性も死刑になり、男性が殺害の手伝いをさせた人物は懲役10年となりました。

殺人の依頼料、幾らだった?


 殺人の依頼として提示された金額は前述の通り借金をチャラにする分と成功報酬分を合わせて630円です。
 では当時の貨幣価値について考えてみましょう。
 事件と動燃に勃発した第一次世界大戦の際に誕生した成金として著名な山本唯三郎をモデルにしたとされる有名な風刺画で、靴を探すのに百円札を燃やして明りにしているシーンが描かれています。
 この100円札の価値が20~40万円ぐらいとされています。

 貨幣価値の現代への換算は何を基準にするのかで大きく異なってきますが、ここでは中央値で30万円ぐらいと仮定します。すると借金は約70万円弱、成功報酬は120万円。190万円ほどの金額で殺人の依頼がなされた事になります。

 男性側に借金という弱みがあった事を考慮しても、人を3人も殺すのには安い金額のように感じました。
 


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画像:火災


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